大阪市幹部を懲戒処分 市分割コスト試算巡り

大阪市を廃止して4特別区に再編する「大阪都構想」の住民投票(11月1日)の直前、大阪市財政局が報道機関の求めに応じ、市を4分割した場合の財政試算を作成し、関係部署や市長らの判断を仰がずに情報提供するなどしたとして、同市は24日、財政局幹部ら3人を減給3~6カ月の懲戒処分としたと発表した。
処分対象の3人は東山潔財政局長と佐藤晴信財務部長、12月1日付で他部署に異動した中村昭祥前財務課長。処分は24日付。
大阪市によると、3人は9月下旬から10月上旬までの間、複数の報道機関の求めに応じ、大阪市を4分割した場合、標準的な行政サービスを想定した費用「基準財政需要額」が4自治体合計で現行水準を218億円上回るとする理論上の数値を試算し、情報提供した。
大阪都構想の住民投票が差し迫った時期であり、理論値の公表によって住民投票にどう影響が及ぶかなどを考慮し、慎重に判断すべきだったが、関係部署と連携せずに対応したと指摘。市長や副市長の判断も仰がず、結果として、市民に誤解と混乱を生じさせたとした。
また、毎日新聞から事前に示された原稿案を財政局内で共有。市議会議員からの情報提供依頼があった際、原稿案の一部を公文書と認識しながら破棄したと指摘。市の条例では、組織的に共有していれば、公文書に該当するとしている。
同市の高井俊一・人事室次長は24日、記者会見し「市民の本市に対する信頼を著しく失墜させた。誠に遺憾であり、深くおわびする」と謝罪した。
毎日新聞の報道後、松井一郎大阪市長は「財政局は虚偽のものを出した」と指摘。市財政局は試算結果について「あり得ないもの」と釈明していたが、高井次長は「理論上の数字は間違っていないし、説明を尽くした上で提供した。時期が違えばそんなに大きく問題にならなかったと思う」と説明した。
毎日新聞は24日、「記者が取材相手に草稿を渡した点は、専門的な内容について慎重に取材し正確に報道するためではあったが、軽率だった」などとする大阪本社の島田智編集局長のコメントを出した。