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応援職員受け入れ計画、市町村の5割未策定 熊本地震5年

(更新)

災害時に他の自治体からの応援を効果的に受け入れる「受援計画」の策定が遅れている。14日で発生5年となった熊本地震で重要性が再認識されたが、策定済みは全国の市町村の45%にとどまる。被災自治体には避難者支援や廃棄物処理など膨大な業務がのしかかり、策定の遅れは復興の妨げとなる恐れがある。

受援計画は、応援職員や支援物資を受け入れる流れや必要業務の内容をまとめたもの。東日本大震災で応援職員の受け入れを巡って混乱が起きたのを機に、政府が2012年、災害対策基本法に都道府県と市町村の努力義務として盛り込んだ。

受援計画に再び注目が集まったのは熊本地震だ。発災1カ月で熊本には全国から延べ約2万7千人が派遣されたが、県内で計画を策定していた市町村はゼロだった。

震度7を2度観測した熊本県益城町は1カ月で600人近い応援を受け入れたものの、被害状況調査が専門の職員ががれき撤去に従事するなどミスマッチが発生。同町担当者は「人手に過不足が生じ、効果的な配置ができなかった」と悔やむ。

政府は翌17年3月に計画策定の指針をまとめ、受け入れ担当者や応援職員の配置を明確にすることなどを定めて自治体に策定の推進を求めた。

「計画があったのでスムーズに対応できた」。18年7月の西日本豪雨で7千棟以上の浸水被害が出た岡山市の担当者は振り返る。豪雨直前の同年3月に受援計画を策定、罹災(りさい)証明書の発行業務などを300人以上の応援職員に振り分けて円滑に対応できたという。

だが、こうした自治体は一部だ。総務省消防庁が2月に公表した受援計画の策定状況によると、策定済みは全国の市町村の45%。都道府県ごとに策定済み市町村の割合をみると、福岡県(95%)や熊本県(62%)など高い自治体がある一方で、三大都市圏は東京都(39%)、大阪府(40%)、愛知県(37%)といずれも4割以下だった。岡山県(15%)や富山県(20%)など遅れが目立つ自治体もあった。

都道府県単位の計画でも山形、静岡、佐賀、沖縄の4県は策定を終えていない。

背景には、自治体が防災対策として作成すべき計画が多く、受援計画まで手が回らない事情がある。災害対策基本法は自治体に対し、総合的計画の「地域防災計画」を策定し、必要に応じて毎年更新することを義務付けている。南海トラフ地震や首都直下地震などの被害想定地域には「防災対策推進計画」の作成も求められている。

高知県黒潮町は災害対策に関わる職員が10人ほどしかいない。南海トラフ地震による津波で被害が予想され、応援職員を受け入れる必要があるが、担当者は「人手が少ない中、津波や豪雨、土砂災害への対策強化、新型コロナウイルス対応の避難所の整備など課題は多い。受援計画に手をつけられない」と明かす。

東京都は18年1月に受援計画を策定したが、都内の市区町村は道半ばだ。首都直下地震で被害が予想される墨田区も受援計画を策定できていない。同区の担当者は「計画の前提となる災害の種類や規模の予測作業には時間がかかる。ノウハウ不足など課題も多い」とため息をついた。

東京大の目黒公郎教授(都市震災軽減工学)は「応援が必要な災害を経験した自治体が少なく、重要性が広まっていない」と指摘。「被災地に派遣された職員から策定の要点を聞き取り、自治体内で共有することが大切。応援職員を有効活用し、地元職員にしかできない仕事に注力できる体制を早期に構築する必要がある」と話す。

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