長寿祝う儀式、令和に再興 皇室ゆかり京都・泉涌寺

皇室ゆかりの寺として知られる京都市東山区の泉涌寺で、長寿を祝う儀式「算賀の祝」が、宮中の古儀に倣い「再興」された。令和の時代に新型コロナウイルスにより世界中で多くの命が失われる中、泉涌寺は「年齢を重ねられるありがたさを感じ、今後の人生をより明るく過ごしてもらいたい」としている。
寺によると、「算」は年齢を数えることで、儀式の始まりは奈良時代。平安時代には、淳和天皇が嵯峨上皇の長寿を祝し、正式な宮中行事になった。当時は長生きとされた40歳から10年ごとに、宴や奏楽、作詩などで祝った。儀式は源氏物語の一節に描かれ、室町時代以降こうした長寿を祝う風習は民衆にも広がり、現在の還暦などの祝いにつながっているという。
「超高齢化社会を迎えた日本で、長寿をたたえる儀式を作り上げたい」。和婚式プロデュース会社「京鐘」(京都市)の辻順子社長(76)が計画を練り上げ、15年ほどかけ再興にこぎ着けた。
儀式では古式に倣い、ハトを飾り付けたつえを泉涌寺の上村貞郎長老が受者に授ける。ハトはめでたく不思議な霊鳥としてあがめられており、今後も健康に気を付け、長寿の人生を謳歌するようにとの願いが込められている。
再興後、昨年12月に初めて儀式に臨んだのは、埼玉県所沢市の大滝和明さん(64)と礼子さん(59)夫婦。平安貴族さながらに束帯と十二単(じゅうにひとえ)をそれぞれまとった2人は、皇室関係者の来訪時以外は原則閉じられている勅使門を通り、歴代天皇も参拝してきた舎利殿に入った。厳かな雰囲気の中、和明さんは「慈悲をもって社会に貢献し、良き家庭を守り、心身修養に努めます」と誓った。
年齢を問わず一般の個人または夫婦などが儀式を受けられる。費用は衣装により、78万円から。〔共同〕