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震災から続くAS井村ジャパンとの絆 作曲家の大沢氏

兵庫県西宮市在住の作曲家、大沢みずほ氏は25年以上も井村雅代氏が率いるアーティスティックスイミング(AS)日本代表に演技の楽曲を提供してきた。今夏の東京五輪で日本が演じる4演目の曲も全て大沢氏の作品。17日で発生から26年となる1995年の阪神大震災からの復興を願う曲を手掛けたことなどを機に、井村ジャパンを縁の下から支え続けている。

大沢氏は東京五輪で使われる全4演目の曲を手掛けた

大沢氏によると、井村氏が94年の世界選手権に向け奥野史子のソロ曲の作曲家を探していた際、共通の知人だった音楽制作会社の社長を介して出会った。大沢氏は「井村さんは当時から一切妥協しない人」。井村氏からの細かな注文や頻繁な編曲の依頼にも「音をあげず、必死に食らいついた」。

こうして井村氏の信頼を得た大沢氏の手で完成した曲が「夜叉の舞」だった。奥野がこの曲で「女の情念や怒り」を演じ切り、銀メダルを獲得。AS界で今も語り継がれる名演技の曲を作ったことが井村氏との二人三脚の始まりとなった。

次なる依頼は、アトランタ五輪を翌年に控えた95年の同五輪予選向けの作曲だった。2人で決めた曲のテーマは「雅」。だが、構想中に阪神大震災が起こった。

西宮市の自宅は半壊。窓の外では連日、自衛隊が救助・復旧活動をしていた。大沢氏は「雅という曲を作る心境にはなれない」と一度は断ったが、井村氏から「雅ではなく、今の思いを曲にしてほしい」と頼まれ、思い直して引き受けた。

こうして作り上げたのが「HOPE」。震災からの復興の願いを込めた曲で日本はアトランタ五輪の出場権をつかみ取った。以降、井村氏が率いる日本代表に曲を提供し続けてきた。

今夏の東京五輪向けの全4曲も手掛けた。チーム・フリールーティンのテーマは「祭り」。和太鼓など和楽器を中心に使って日本各地の祭りの雰囲気を表現した。作曲前には選手たちと徳島の阿波踊りに参加。選手からの要望で曲の終盤に阿波踊りのお囃子(はやし)を挿入し、苦しくなって体が動かなくなるラストの演技を後押しする。

デュエット・テクニカルルーティンの曲にはバーチャル歌手「初音ミク」の歌声を採用。「(初音ミクのファン層である)日本の若者にもAS日本代表に関心をもってもらいたい」との願いを込めた。

CMや舞台などの音楽も手掛けてきた大沢氏だが、「最近は井村さんと競技音楽を作るために生まれてきた気がする」。大沢氏にとっても東京五輪は作曲家人生で一世一代の大舞台となる。

(田村城)

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