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長打も魅力の阪神・近本 心身充実、飛躍の時

オープン戦で打率5位の成績を残した阪神・近本。プロ3年目で心身ともに充実している=共同

今年の阪神打線で話題を集めそうなのは、オープン戦で本塁打6本と量産したドラフト1位ルーキーの佐藤輝明(22)だけではない。2年前のドラフト1位、近本光司(26)のバットから快音が止まらない。打撃改造の成果か、昨年にも増して強い打球が増え、オープン戦5位の打率3割2分4厘をマーク。プロ3年目の今季はチームの選手会長にも就任し、心身ともに充実の時を迎えている。

新人の年から2年連続で盗塁王を獲得し、阪神の1番中堅の定位置を不動のものにした。ここまでの歩みと身長171センチ、体重67キロの小さな体は2000年代に阪神で2度のリーグ優勝に貢献した赤星憲広(170センチ、66キロ)と重なる。

一方で、先人とは明らかに違う一面を示したのは昨年9月15日の巨人戦(東京ドーム)だった。開幕から土つかずの連勝街道をひた走っていた菅野智之から2打席連続本塁打を放ち、驚かせた。

さらに2日後の17日の巨人戦(同)でも1試合2発。これを機にプロ通算3本塁打の赤星にはなかった近本の意外な長打力がクローズアップされるようになった。

左打者にとって逆風となる浜風が吹く甲子園を本拠地にしながら、2年連続で9本塁打。長嶋茂雄(巨人)の持つリーグの新人最多安打記録を更新するなど巧打者であることは誰もが認めるが、最近は一発もあるイメージも定着しつつある。

目指すは快足と強打を兼ね備えた選手

目指すべき打者像は赤星というよりも、169センチ、68キロと小柄ながら通算208本塁打とパンチ力もあった福本豊(阪急)なのかもしれない。福本は通算1065盗塁の偉業が注目されがちだが、通算2543安打を記録し、うち30%の772安打が長打だった。1980年には年間21本塁打を放っており、足だけが強みの選手ではなかった。

井上一樹ヘッドコーチも近本には福本のように快足と強打を兼ね備えたスケールの大きな選手になってほしいと願う一人だ。「塁に出て走るのが(近本の)仕事かもしれないけど、シーズンを通じて10本は打てる打者。自分みたいなタイプが大きいのを狙うのはダメという(消極的な考えをする)のはやめるように言っている」と明かす。

小さくまとまらないよう今季から打撃改造に取り組んでいる=共同

本人も小さくまとまるつもりはないようで、今季から打撃改造に踏み切った。具体的な修正点や狙いは「説明が難しい」と明らかにしないが、オープン戦での打率をみれば好結果につながっているのは明らかだ。凡打を含めた打球が全般的に昨季よりも強くなった印象も受ける。

13日の西武戦で3打席目に右翼ポール際へ本塁打を放った際は「映像をみて、バットの出し方や角度が(右前打の)2打席目よりもよかった」と話し、自分の中で描く理想に近いイメージで打てたようだ。2打席目も一、二塁間を渋く破る右前打だったが、「本当はセンターラインに運びたかった。腰の開きが早すぎた」と反省を口にした。打撃に関して相当な高みを見据えていることが言葉の端々からうかがえる。

ストレスのない領域に安住しない

思い出すのは、昨年に新型コロナウイルスの感染拡大でステイホームしていた際の読書の話題だ。自分にとってストレスのない領域「コンフォートゾーン」に安住せず、心身に適度な負荷のかかる領域に挑戦することが成長につながると書かれていた心理学の本に感銘を受けた。今回の打撃改造も現状に安住せず、さらなる飛躍を求めてコンフォートゾーンの外側へ踏み出したということか。

この読書の話に象徴されるように興味の対象が広い。クレバーさを感じさせ、26歳の若さで選手会長に指名されたことも納得がいく。本人も「チームを優勝に向けて引っ張っていきたい」とチームリーダーとしての自覚は十分だ。

ただ、制約がある中でプレーするのは苦手で、昨季は開幕当初に2番を任されて一時は打率1割台と不振に陥った。「2年目のジンクス」と言われたが、状況に応じた打撃を求められる2番が肌に合わなかったのだろう。すぐに1番に戻り、シーズン終盤には打率3割目前まで持ち直したことからも、1番が性に合っているのは間違いない。2番というコンフォートゾーンの外側への挑戦には失敗したが、自分の適性を周囲に理解してもらえたことには意味があった。

過去2年で選んだ四球の数が31個、30個と少ないのは、出塁が重視される1番を務めるうえで気になる点だ。ただ、ボールの見極めを過度に要求すると、持ち味の思い切りのよいスイングが失われかねない。従来型の1番打者像の型にはめず、自由にプレーさせることが快足と強打を兼ね備える近本の魅力をより引き出すことにつながりそうだ。

(田村城)

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