石炭火力発電所の環境アセス訴訟、住民側敗訴 大阪地裁

神戸製鋼所が神戸市で建設工事を進める石炭火力発電所の環境影響評価(アセスメント)の内容が不十分だったとして、周辺住民らが、評価書の変更が必要ないとした国の通知の取り消しを求めた訴訟の判決が15日、大阪地裁であった。森鍵一裁判長は通知を出した国の判断が「裁量権の範囲を逸脱したとはいえず、違法とはいえない」として、住民側の訴えを退けた。
原告の弁護団は判決後の記者会見で「脱炭素の世界的潮流と日本のギャップに司法が苦言を呈してほしかった。このままでは日本は国際的信用と競争力を失うのではないか」と懸念を示し、控訴を検討するとした。
訴訟の対象となったのは、神戸製鋼所が関西電力への売電目的で神戸市灘区に増設し、2021年度から順次稼働を予定する石炭火力発電所2基(出力130万㌔㍗)。原告側は、神戸製鋼所の二酸化炭素(CO2)や微小粒子状物質「PM2・5」の排出による環境への影響評価が不十分で、国が「適正」とする通知を出したことが違法だと訴えていた。

森鍵裁判長は判決理由で、CO2排出に起因する地球温暖化の被害は発電所の近隣住民に限られるわけでなく、住民らは原告として適格でないと判断した。PM2・5については発生方法が科学的に十分解明されていないと指摘。環境影響評価では直接の対象ではなかったが、関連する物質の項目があったとして、評価書に変更を命じなかった国の判断が「不合理とは言いがたい」とした。
石炭火力発電所の建設の手続きでは電気事業法などに基づき、国は事業者の環境影響評価の方法などを審査し、変更の必要がない場合は確定通知を出す。通知を受け、事業者は工事計画を国に提出して工事に着手する。
訴状によると、神戸製鋼所のグループ会社は18年5月、国に環境影響評価書を提出。国は同月に評価書に変更の必要がないとする確定通知を出した。この増設計画を巡っては、神戸地裁でも周辺住民らが神戸製鋼所や関西電力など3社に建設や稼働の差し止めを求める訴訟を起こしている。