チェルノブイリ原発、ウクライナ管理下に IAEA

【パリ=白石透冴、ウィーン=細川倫太郎】国際原子力機関(IAEA)は3月31日、ウクライナ当局からの報告として、北部のチェルノブイリ原子力発電所を制圧していたロシア軍が原発の管理をウクライナ側に移したことを明らかにした。ウクライナ内務省は同日、ロシア軍との主戦場が東部に移ってきているとの認識を示した。ロイター通信が伝えた。
IAEAによるとチェルノブイリ原発を制圧していたロシア軍はベラルーシに向け移動した。ウクライナ当局は一部の部隊はまだ残っていると報告したが、こちらも撤退の準備を進めているとみている。米ブルームバーク通信によると、ウクライナ当局は、ロシア軍が同原発周辺の塹壕(ざんごう)を掘って被曝(ひばく)したとも発表した。
IAEAのグロッシ事務局長は数日以内に支援チームを同原発に派遣するため、ウクライナ当局と緊密に協議していると述べた。ウクライナを訪問していた同氏は3月31日、ロシアの飛び地領カリーニングラードに到着した。4月1日にロシア高官と会談する。軍事行動への懸念を伝達し、原発の安全確保の徹底を呼びかけるとみられる。
ロシア軍の状況についてウクライナ内務省幹部は「首都キーウ(キエフ)周辺地域から引き揚げ始めている」と指摘した。北部チェルニヒウについては「同じことが起きているか判断するのは早すぎる」として、ロシア軍の動向を注視する考えを示した。ロシア国防省は29日、キーウとチェルニヒウでの軍事活動を縮小すると発表している。

ロシア軍は当初、キーウの陥落を狙ったとみられるが、ウクライナ軍の激しい抵抗や補給の困難を受けて戦略を変えた可能性がある。
ロシア軍は代わりに南東部の港湾都市マリウポリや近郊のボルノバハ、東部イジュームの攻略を重視しているとみられる。武力併合した南部クリミアと実効支配する東部ドンバスから部隊を比較的送りやすく、有利に戦いを進められると期待しているようだ。
ロシア軍が包囲するマリウポリでは依然として10万人以上の市民が取り残されているとみられ、人道危機が深刻になっている。ロシア軍は30日、マリウポリで31日朝から一時的に交戦を停止し、市民の救出を進めると一方的に通告した。ただ実施されたかは明らかになっていない。
※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。
この投稿は現在非表示に設定されています
(更新)

ロシア軍がウクライナに侵攻しました。戦況や世界各国の動き、マーケット・ビジネスへの影響など、関連する最新ニュースと解説をまとめました。
■戦況
■マーケット・金融への影響
■ビジネスへの影響
■調査報道