国連・トルコ、穀物輸出合意維持へ仲介 ロシアが停止

【イスタンブール=木寺もも子】ウクライナ産穀物の輸出を再開する合意の履行をロシアが一方的に停止した問題で、国連のグテレス事務総長は30日の報道官声明で、輸出再開に向けて関係国と「緊密に連絡を取り合っている」と明らかにした。国連と共に合意を実現に導いたトルコも再び仲介に動いている。
グテレス氏はロシアによる合意停止に「深い懸念」を表明した。対応にあたるため11月1~2日にアラブ連盟首脳会議が開かれるアルジェリアへの出発を遅らせる。
グテレス氏は、ロシア産の穀物や肥料の輸出を再開させることも目指しているという。米欧が科した制裁の直接の対象ではないが、海運会社や保険会社、金融機関などがロシアとの取引を避けるため、輸出が滞っているとされる。ロシアは穀物合意の一環として、自国産品の輸出も再開される必要があると主張していた。
国連と共に穀物合意を仲介したトルコも30日、声明を発表し、関係者と協議を続けていると明らかにした。イスタンブールに設けられたウクライナ、ロシア、国連、トルコの4者による共同調整センター(JCC)に駐在するロシア人職員は引き揚げておらず、既にイスタンブールまで到着した穀物船の検査は30~31日も続けられるという。
ロシアは29日、4者が7月に結んだ穀物合意への参加を一方的に停止したと発表した。占領しているウクライナ南部クリミア半島のセバストポリ軍港で同日早朝、ウクライナ軍が多数の無人機で「テロ攻撃」を行ったためだと主張している。
穀物合意はロシアによる侵攻後、ウクライナ産の穀物を運ぶ黒海ルートが使えなくなり、輸出が滞った問題を受けて実現した。ウクライナは小麦の輸出量で世界の1割を占める穀倉地帯だ。輸出停滞による価格上昇で特に購買力の低い途上国が食料危機に陥ると懸念されていた。

2022年2月にロシアによるウクライナへの軍事侵攻が始まって1年になります。戦況や世界各国の動き、マーケット・ビジネスへの影響など、関連する最新ニュースと解説をまとめました。
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