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IEA、原子力投資「3倍」必要 脱炭素・エネ安保に貢献

【マドリード=竹内康雄】国際エネルギー機関(IEA)は30日、原子力の役割を分析した報告書を公表した。2050年までに温暖化ガスの排出を実質ゼロにする目標は「原子力なしでは困難」と指摘し、エネルギー安全保障の観点からも原子力の活用が化石燃料への依存を減らすと評価した。50年までに「実質ゼロ」を達成するには、原子力への投資を足元の3倍超に引き上げる必要があると試算した。

世界のエネルギー供給に占める原子力の割合は20年で5%。IEAによると、32カ国で413ギガワットの容量がある。IEAのシナリオでは、50年に排出を実質ゼロにするには、原発の容量を倍増させる必要がある。

そのためには、投資額は10年代では年間300億ドル(約4兆円)程度だったのを30年までに1000億ドルに引き上げ、50年までは800億ドル程度を維持する必要があるとする。同じシナリオでの再生可能エネルギーの必要投資額は30~35年で年1.3兆ドルとはじいている。

足元では、ロシアのウクライナ侵攻をきっかけに、エネルギーの供給不安が拡大。ドイツはロシア産ガスの輸入減少に備えて石炭火力発電を拡大する準備に入った。オランダやポーランドでも同様の動きがある。だが石炭は二酸化炭素(CO2)を多く排出する。原子力の活用は化石燃料への依存を減らす意味もあり、エネルギー安保の改善に貢献する。

もっとも、原子力にはコストの問題がある。足元の事例では先進国では1キロワットあたりの建設コストは9000ドル。これを他のエネルギーとの競争力の観点から、30年までに5000ドルに減らす必要があるという。具体策として同じ設計で、同じ敷地内に複数の原発を建設することなどを挙げた。

安全面への懸念もあり、2011年の東京電力福島第1原発の事故以来、先進国での建設は停滞しているのが実態だ。17年から建設が始まった世界の原発31基のうち、27基が中国とロシア製だった。中国は国内を中心に建設し、ロシアは輸出で成果を上げている。

中国やロシアが予算、工期ともにおおむね予定通りに進んでいるのに対して、フランスやフィンランドでは、大型炉の建設が大幅に遅れ、コストも膨らんでいる。IEAは先進国が市場の主導権を失っていることに懸念をにじませた。

IEAは原発を活用する政策として、既存原発の稼働期間の延長に加え、水力や原子力など低炭素で安定して発電できる電源を対象とした電力市場を整備するよう提言した。より安全とされる小型原子炉の開発にも力を入れるよう促した。

日本では原発の再稼働が進んでいないが、IEAは「原発の再稼働が早まれば、欧州やアジア市場で必要とされている液化天然ガス(LNG)を(他国が)確保できる可能性がある」と分析した。足元で問題になっている電力不足の解消にもつながる可能性がある。

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