ネタニヤフ首相、銃撃事件で「強力な対応」 銃規制緩和

【カイロ=久門武史】イスラエルのネタニヤフ首相は28日、エルサレムのシナゴーグ(ユダヤ教会堂)銃撃事件を受け「強力、迅速な対応」を明言した。市民の自衛のため銃規制を緩和する方針を表明した。占領するヨルダン川西岸でのユダヤ人入植地の拡大も示唆し、パレスチナへの圧力を強める姿勢を示した。
27日夜にエルサレム北部のシナゴーグでパレスチナ人の男(21)が銃を乱射し、イスラエル人7人が死亡、3人が負傷した。ロイター通信によると、エルサレムでのテロの犠牲者として2008年以来で最多となった。男はイスラエル警察に射殺された。28日午前にはエルサレム旧市街付近で少年(13)による銃撃で2人が負傷した。
ネタニヤフ氏は銃撃事件を受けて28日に安全保障閣議を開き「我々の対応は強力、迅速だ」と強調した。銃撃犯の自宅の封鎖と破壊を決めたほか、イスラエル人の自衛のため「さらに数千人の市民が武器を携帯できるよう所有許可を促進し拡大する」と決めた。「テロリストの家族」に対する社会保障を停止する方針も示した。
首相府はネタニヤフ氏が「入植地を強化する手段」を決めたとも発表した。具体策は示さなかったが、パレスチナへの懲罰的措置とみられる。
27日のシナゴーグ銃撃を巡って、西岸やパレスチナ自治区ガザではパレスチナ人が花火を打ち上げ称賛した。ガザを実効支配するイスラム原理主義組織ハマスの報道官は「英雄的な作戦はジェニンの報復だ」と表明した。
エルサレムでの銃撃に先立つ26日、イスラエル軍はヨルダン川西岸のジェニンにある難民キャンプで過激派「イスラム聖戦」を急襲し、銃撃戦でパレスチナ人9人が死亡した。27日にかけてガザからイスラエルにロケット弾が発射され、イスラエル軍はガザを空爆した。報復の応酬で緊張が高まっていた。
ネタニヤフ氏は22年12月に極右政党との連立政権を発足させた。史上最も右寄りの政権で、パレスチナへの強硬姿勢を強めると懸念されていた。
一方でネタニヤフ氏は28日、事態の悪化は望まない考えを改めて強調した。市民に対し「勝手に制裁を加えてはならない」と呼び掛け、暴力の連鎖に歯止めをかける姿勢も示した。
国際社会は緊張の悪化に懸念を示している。ブリンケン米国務長官は30日からイスラエルとヨルダン川西岸を訪問しネタニヤフ氏、パレスチナ自治政府のアッバス議長とそれぞれ会談する予定だ。