プーチン氏、米書面回答に不満表明 仏ロ電話協議

【モスクワ=石川陽平、パリ=白石透冴】ロシアのプーチン大統領は28日、フランスのマクロン大統領と電話で協議した。米国と北大西洋条約機構(NATO)がロシアに示した欧州安全保障に関する書面回答について、NATOの東方拡大の停止などロシアの主な要求が無視されていると不満を示した。書面回答を注意深く検討した上、今後の行動を決めるとした。
ロシア大統領府によると、欧州安保を巡っては、ロシアが2021年12月に米国とNATOにそれぞれ合意案を提案し、最も重視する項目としてNATOの東方拡大停止などを盛り込んだ。これに対し、米国とNATOは1月26日、主な要求を明確に拒否する一方、対話継続へ軍備管理交渉の可能性や演習の制限などを示した書面回答をロシアに渡した。
米国とNATOの書面回答に対するプーチン氏の反応が伝わったのは初めて。ロシアと米国、NATOとの協議が継続され、ロシアが軍事圧力を強めているウクライナ情勢の緊張緩和につながるかどうかが今後の焦点となる。
28日のマクロン氏との電話協議では、親ロシア派武装勢力と政府軍の間で続く東部紛争にも触れた。プーチン氏は停戦と和平への道筋を示した2015年の「ミンスク合意」の履行の重要性を強調した。東部紛争を巡っては26日、独仏ロとウクライナによる実務協議がパリで開かれた。プーチン氏は4か国協議を継続する意向を示した。
欧州側は米国と協力しつつも、主体的に緊張緩和に向けた外交努力を続ける考えだ。ベーアボック独外相とルドリアン氏は近くウクライナのキエフを訪問し、同国政府と東部紛争をめぐる協議の条件などについて擦り合わせる。ロシアも含めた4カ国高官による協議も約2週間後にベルリンで開く予定だ。
ルドリアン仏外相は28日、仏ラジオで「ボールはプーチン氏側にある」と語り、ロシア側が緊張緩和に向けて行動するべきだとの認識を示した。「今のところ、(ロシアとの)対話は続けられる」と語った。欧州連合(EU)のボレル外交安全保障上級代表は27日、ツイッターで「多くの脅威にさらされるウクライナ政府を支援する方法を、さらに探る」などと発信した。
ロシアのラブロフ外相は28日のラジオ番組で、関する米国、北大西洋条約機構(NATO)との欧州安保を巡る協議で両者から受け取った書面回答に関して、対応策はプーチン氏が決めると改めて指摘した。ただ「(協議が)終わったと言うことはできない」と述べ、書面回答で提案された軍備管理などについて話し合いを続けたい意向も示唆した。
ミンスク合意はウクライナ政府軍と同国東部親ロ派の紛争解決に向け、独仏ロ・ウクライナの4カ国首脳が15年にまとめた文書だ。だが主要な項目を巡るロシア側とウクライナの対立から履行されず、ウクライナ情勢の緊張につながっている。