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WHO、コロナ緊急事態を継続 解除時期示さず

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【パリ=北松円香】世界保健機関(WHO)は30日、新型コロナウイルスに関する緊急事態宣言を継続すると発表した。世界の死者数がなお多く、中低所得国でのワクチン接種も不十分な点を踏まえて判断した。解除時期の見通しや具体的な条件は示さなかった。2020年1月末に始まった緊急事態は4年目に突入することになった。

27日に開いた新型コロナウイルスに関する専門家の緊急委員会の議論を受けて決めた。WHOのテドロス事務局長は昨年12月14日に「国際的に懸念される公衆衛生の緊急事態」について「来年に解除できると期待している」と表明したが、直後に中国で感染が急拡大し、警戒が強まった。

テドロス氏は、1月のコロナ緊急委は緊急事態解除に向けた条件が議題になると説明していた。だが、今回公表した声明は、昨年10月に開催した前回と比べて内容に大きな変更は見られなかった。

世界のコロナ感染状況は昨秋から小康状態にあったが、ゼロコロナ政策を解除した中国を筆頭に再び悪化している。米国を中心に急速に広がる派生型「XBB.1.5」も懸念要因だ。WHOは「これまで検出された派生型で最も感染力が強い」と指摘する。

緊急委はコロナについて「他の呼吸器感染症に比べて依然として死者数が多い」と強調した。一方、ワクチン接種や感染による免疫獲得が広がりつつあることから「パンデミック(世界的流行)は転換点に達している可能性がある」と緊急事態の解除に向けて含みを残した。

緊急委はWHO事務局に対して、緊急事態を数カ月以内に解除する場合は、ワクチン開発と承認、診断、治療に関する規制への影響について調査するよう要請した。

WHOは「国際的な公衆衛生上の脅威となり得るあらゆる事象」の報告を各国に義務付けた05年の国際保健規則の改定以降、新型コロナを含めて緊急事態を7回宣言している。長期化するケースもあり、14年に緊急事態を宣言したポリオは今も継続中だ。

WHOの緊急事態宣言は各国への強制力を持たないが、世界的に深刻な流行が起きている状況を示す。そのため解除されれば「日米の水際対策の緩和が進む可能性がある」(東京医科大学の浜田篤郎特任教授)。

宣言が解除されても、コロナが感染症の一つとして定着した事実は変わらない。「コロナはワクチン接種などの予防策を実施しながら(人類が)共存していく『普通の』感染症となる」(欧州臨床微生物感染症学会会長でチューリヒ大学教授のジンカーナゲル氏)

コロナ禍を経てなお、世界的な感染症への備えは脆弱だとの見方も多い。米国感染症学会会長のエモリー大学デルリオ教授は「コロナが収束しても、公衆衛生とパンデミック対策は強化していくべきだ。今やらなければまたとない機会を逃すことになる」と指摘する。

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