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英自動車生産、20年は36年ぶり低水準 EU離脱で

【ロンドン=佐竹実、フランクフルト=深尾幸生】英自動車工業会が28日発表した2020年の自動車生産台数は92万台と、1984年以来の低水準となった。欧州連合(EU)離脱を巡る不透明感から減少が続いていたところに、新型コロナウイルスの感染拡大が追い打ちをかけた。政府は電気自動車(EV)化に活路を見いだすが、EUの単一市場から抜けた英国が生産拠点としての魅力を維持できるかは不透明だ。

自工会によると20年の生産台数は前年比29%減。サッチャー政権の誘致で日産自動車が英国に進出した84年(約90万台)以来の水準に落ち込んだ。新型コロナ関連の死者数が10万人を超えた英国ではロックダウン(都市封鎖)が続いており、経済正常化は依然見通せない。21年の生産台数も100万台にとどまると予想している。マイク・ホーズ会長は「追加の通関手続きの負担など新たな環境に適応し、グローバルな競争力を取り戻すことが喫緊の課題だ」と述べた。

英国では16年の国民投票でEU離脱が決まって以降、生産台数は減り続けていた。離脱を巡る先行きの不透明感などから需要が減ったことが一因だ。日本勢が生産の半分を占める英国の自動車産業は、EUから部品を輸入するサプライチェーンで成り立ち、輸出の大半はEU向けだ。そのためもし離脱で完成車に10%の関税がかかれば価格競争力を無くして事業が維持できなくなる恐れがあった。

日産やトヨタ自動車などメーカーは、政府に対して自由貿易協定(FTA)を確実に結ぶよう圧力をかけてきた。英EUは20年12月にギリギリのタイミングでFTAに合意し、英国が完全に離脱した1月から関税が上がる最悪シナリオは免れた。だが通関作業は発生するため、メーカーにとってはコストが増える。

「内燃機関車への投資はしない。EVも市場が大きい方(EU)に投資する」。欧州ステランティス(旧グループPSA)のタバレス最高経営責任者(CEO)は19日、英国生産についてこうけん制した。英中西部エルスメアポート工場でボクスホールブランドを生産するが、新規投資をして存続させるかどうかについては含みを持たせた。英政府から有利な条件を引き出すためとみられるが、もし補助金などの優遇をすればFTAの「公平な競争」の条項に抵触する可能性がある。

英政府は与党・保守党が公約で掲げたEU離脱の実現と、FTA締結の成果を誇り、自動車メーカーも関税ゼロを維持したことを評価する。だが通関コストの増加など単一市場から抜けた代償は小さくない。ホーズ会長も「競争力を維持し、投資を呼び込まなくてはならない」と危機感を示す。

英政府が望みを託すのがEVだ。30年までにガソリン車とディーゼル車の新車販売を禁止し、EV化を促す。「グリーン産業革命」と題して120億ポンド(約1兆6800億円)を投じ、再生エネルギーやEV、電池工場の整備に充てる。保守党の票田でもある地方の雇用確保のためにも、自動車産業は重要だ。

ホンダは21年7月に英国生産から撤退する。トヨタや独BMWなども最適な生産・サプライチェーン戦略を再検討しているとみられ、次期モデルを英国で作り続ける保証はない。産業革命発祥の地である英国の自動車産業がグリーン革命で息を吹き返せるかどうかは依然不透明だ。

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