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ロシア、「併合」強行へ ウクライナ4州で全土の14%

(更新)
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【この記事のポイント】
・ウクライナ4州の併合強行へ。30日に併合宣言も
・EUは航空機関連部品の輸出規制など追加制裁案を発表
・併合を急ぐ背景に戦況悪化。停戦協議再開は遠のきそう

ロシアはウクライナ東・南部4州の一方的な併合に踏み切る。親ロ派勢力が実施した27日までの「住民投票」で賛成が多数だったと正当化する。4州の占領地域の面積はウクライナ全土の約14%を占める。2014年3月のクリミア半島併合に続く武力での国境変更の暴挙に、国際社会はロシアへの非難を一段と強めている。欧州連合(EU)は28日、追加の制裁案を発表した。

ウクライナ外務省は28日の声明で住民の意思表示とは何の関係もない「偽り」だと非難した。「占領地域を解放する」と強調し、国際社会に軍事支援と厳しい対ロ制裁発動を訴えた。

EUのフォンデアライエン欧州委員長は28日、ロシアへの追加制裁案を発表した。航空機や化学関連などの部品・物質の輸出規制を拡大する一方、70億ユーロ(約1兆円)規模のロシア産品の輸入制限を科す。EU市民がロシア国営企業の幹部に就くのを禁じ、輸入する石油価格には上限を設ける。

フォンデアライエン氏は「ウクライナでの偽りの住民投票やいかなる種類の併合も受け入れない」と訴えた。制裁は加盟国の全会一致をへて実施される。

米国のブリンケン国務長官も27日「ロシアにさらなる厳しい代償を迅速に科す用意がある」と述べた。

ロシア編入の是非を問う住民投票は、東部のルガンスク、ドネツクと南部のザポロジエ、ヘルソン4州の占領地域で23~27日に行われた。親ロ派は即日開票の結果、賛成票が87~99%を占めたと主張した。クリミア併合時の住民投票での賛成票は97%だった。

ルガンスク、ヘルソン、ザポロジエ州の親ロ派は28日、プーチン大統領にロシアへの編入を正式に要請した。各州は「条約」と呼ぶ合意文書を締結する見通しだ。ロシアのメドベージェフ前大統領は27日夜、住民投票の結果についてSNS(交流サイト)に「ロシアにお帰りなさい」と投稿した。

クリミア併合では住民投票から、5日後に手続きを完了していた。ロシアメディアによると、30日にプーチン氏が併合を宣言する演説を行う可能性がある。

米戦争研究所の地図データをもとに計算すると、4州の占領地域は27日時点で約8.6万平方キロメートル。ウクライナ国土の約14%に当たりクリミア半島(2.7万平方キロメートル)の約3.2倍の広さだ。

軍事侵攻に加えて、占領地の併合は「武力による威嚇または武力の行使」によって「領土保全」を侵すことを禁じた国連憲章2条に違反する。

ウクライナの国内法にも明白に反しており、住民投票や一方的な併合は米欧日だけでなく中印などの支持も得られず、ロシアの国際的孤立が一段と深まるのは確実だ。

それでも、プーチン政権が4州の併合を急ぐ背景には戦況の悪化がある。米欧の軍事支援を受けたウクライナ軍の攻勢で、占領地域の維持が難しくなった。深刻な兵力不足を補うため併合地域での動員を強化し、「自国領」だとして核兵器の使用もちらつかせながら、ウクライナ軍の勢いを食い止めたい考えだ。

14年のクリミア併合時とも大きく状況は異なる。クリミア侵攻は短期で死者もほぼ出さず、国民の愛国心に訴えてプーチン政権への支持率は大きく上昇した。

2月に開始した今回の侵攻は短期で首都キーウ(キエフ)を制圧するシナリオが、早々に崩れた。戦況悪化と経済制裁でプーチン政権は苦境に追い込まれている。21日に発令した部分的な動員令では、大規模な国外脱出の動きが表面化。徴兵事務所への放火も相次ぐ。

在ロシア米大使館は28日までに、ロシアに居住、滞在する全ての米国人に国外退避勧告を出した。米ロの二重国籍者については、部分動員令の対象となる可能性があると指摘した。

住民投票でウクライナのゼレンスキー政権は態度を硬化させており、停戦協議の再開はさらに遠のきそうだ。

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