オランダ裁判所、シェルにCO2削減命令 30年までに45%

【ロンドン=篠崎健太】オランダ・ハーグの地方裁判所は26日、欧州石油最大手の英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルに対し、二酸化炭素(CO2)の純排出量を2030年までに19年比で45%削減するよう命じる判決を出した。シェルは控訴を検討している。裁判所が温暖化ガス削減の具体的な数値目標を課すのは異例で、石油業界への脱炭素の圧力がさらに強まってきた。
シェルは2月、温暖化ガス排出量を50年までに実質ゼロとする長期目標を発表していた。中間目標として、エネルギー1単位あたりのCO2純排出量を16年比で30年に20%、35年に45%それぞれ減らす方針を打ち出した。
判決は不十分だとして大幅な上積みを求めた形だ。裁判所は近年の取り組み強化を認めつつ、長期目標について「具体性が乏しく拘束力も無い」と指摘した。気候変動に対処する責任を認定して削減を急ぐよう求めた。操業や電力消費などで発生する分に加え、販売した製品の消費から生じる分を含む供給網全体の排出量「スコープ3」までが対象になる。
訴訟は複数の環境保護団体が提起していた。原告の一つであるフレンズ・オブ・ジ・アース・オランダのディレクター、ドナルド・ポルズ氏は「国際的な気候変動運動にとって大きな前進だ」と語った。原告側の弁護士は「裁判所が(温暖化対策の国際枠組み)パリ協定の順守を巨大な汚染企業に命じたのは初めてだ」との声明を出し、歴史的な意義を強調した。
シェルの広報担当者は「気候変動には緊急の行動が必要で、我々は50年までに実質ゼロ排出のエネルギー企業になるよう努力を加速している」とコメントした。再生可能エネルギーなどの低炭素分野に注力していくと強調した。判決は「残念だ」とし、控訴する方針を示した。
シェルは石油生産量は「19年がピーク」として、30年にかけて年1~2%のペースで減らしていく計画を掲げている。温暖化ガスを多く出す化石燃料への依存を減らし、50年の実質ゼロ排出に向けて低炭素エネに経営の比重を移していく方針だ。
5月18日の定時株主総会にはエネルギー転換の長期戦略を諮り、88.74%の賛成で承認されていた。判決は未確定だが、温暖化対策のさらなる強化を促すことになりそうだ。
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