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EU復興基金、夏に分配開始へ イタリアが29兆円計画

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ECB総裁を務めたドラギ首相はEUからの信認が厚い =ロイター

【ウィーン=細川倫太郎、ブリュッセル=竹内康雄】欧州連合(EU)は今夏にも、新型コロナウイルスで打撃を受けた経済を立て直すための復興基金の資金分配を始める方針だ。イタリア政府などは資金を受け取る条件である復興計画づくりを急ぐが、分配に手間取れば欧州の景気回復がさらに遅れかねない。

イタリア政府が25日発表した復興計画の規模は総額2221億ユーロ(約29兆円)。環境やデジタルに重点投資するのが柱で、約9割をEUの復興基金でまかなう。2月に就任したドラギ首相は「国を近代化するためのより広範で野心的な戦略だ」と訴える。2021~26年まで6年間にわたって投資し、国内総生産(GDP)を3.6ポイント押し上げるとみる。

復興基金から資金を受け取るには、6年間にわたる計画をEUの欧州委員会に提出して審査を受ける必要がある。基金はコロナによる被害が大きいイタリアやスペインなど南欧諸国に手厚く配分する。デジタルや環境分野に集中投資し、景気回復と経済の構造転換を同時に促す。基金の趣旨に合致していなければ、計画は認められない。

復興計画の提出期限は30日。伊メディアによると、EUはインフラ投資が多い点などイタリアの計画の一部に懸念を示したが、ドラギ氏がフォンデアライエン欧州委員長と電話会談し、折り合ったとみられる。

ドラギ政権はポピュリズム(大衆迎合主義)の左派「五つ星運動」、極右「同盟」など多党連立で構成し、各党の支持基盤や利害は一致していない。ミラノ大学のナバレッティ教授は「異なる政治勢力が同居するなかで、衝突リスクや必要な改革ができない可能性もある。非常に難しい挑戦だ」と話す。

「できるだけ早く資金を行き渡らせたい」。EU高官は23日、7月にも資金を配るとの考えを表明した。EUではなおコロナ禍が収まらず、景気低迷が長引くリスクが意識されているからだ。

バイデン米政権は3月、約200兆円規模の経済対策を成立させた。一方の復興基金の規模は約7500億ユーロ(約100兆円)と米国の半分ほど。EUの対策は規模だけでなく速さでも劣る――。加盟国にはそんな不満もある。

実際、国際通貨基金(IMF)が4月に公表した成長率予測では、米経済が21年に6.4%拡大するのに対し、ユーロ圏は4.4%にとどまる。「(経済対策の)規模の拡大を検討すべきだ」(マクロン仏大統領)との声も出る。

不安材料は少なくない。欧州委によると、復興計画を期限内に提出できるのはEU27カ国のうちイタリアやスペイン、ポルトガルなど十数カ国とみられる。6年にわたる計画をつくるのは、東欧などの小国に大きな負担のようだ。提出が5月にずれ込む加盟国は全体の半数近くとみられ、資金を受け取るのが遅れ、景気回復にも影を落とす。

復興基金の原資として、欧州委は21年半ばから債券を発行して資金調達を始める。債券発行には全加盟国の批准が必要だが、現時点で10カ国前後で手続きが終わっていない。債券を発行できなければ、資金分配に支障を来す恐れがある。

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