米欧、プーチン大統領や外相に制裁 ウクライナ侵攻で

米財務省は25日、ロシアのプーチン大統領とラブロフ外相に制裁を科すと発表した。両氏の資産を凍結し、同様の措置を講じる欧州に足並みをそろえた。ロシアに対してウクライナへの軍事侵攻の責任を問うため異例の措置に踏み切った。
イエレン財務長官は声明で両氏について「不当かつ違法なウクライナ再侵攻の直接的な責任を負っている」と非難した。「国家元首に制裁を科すことは極めて珍しい」と強調。制裁済みの北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記やシリアのアサド大統領をあげて「独裁者などで構成するとても小さな集団にプーチン氏は加わる」と説明した。
財務省は凍結するプーチン氏の資産規模には触れていない。財務省はロシアのショイグ国防相とロシア軍のゲラシモフ参謀総長も制裁対象に指定した。
米国に先立って欧州連合(EU)と英国は25日、プーチン氏とラブロフ氏を制裁対象にすると明らかにした。
EUは同日の外相理事会で承認した。EUによる首脳級への制裁は、アサド氏とベラルーシのルカシェンコ大統領の例がある。EU高官によると、ドイツとイタリアはプーチン氏らを制裁対象に加えることに難色を示していたが、侵攻が激しさを増していることから態度を和らげたという。
制裁はほかに、ロシアの外交官向けにEU加盟国のビザの取得を難しくしたり、ロシア人が多額の現金をEUの銀行に預けたりすることを制限する。金融部門では複数の銀行にEUの市場に参加できなくする措置をとるほか、エネルギー・運輸部門では、製油所の更新に必要な部品といった重要製品の輸出を規制する。
英国のジョンソン首相も25日、プーチン氏とラブロフ氏に対する制裁について「すぐに導入する」と明らかにした。これまでプーチン氏の戦略に深く関係する100を超える人物や団体の英国内の資産を凍結しており、プーチン氏らにも同様の制裁を科す見通しだ。
国際決済ネットワークの国際銀行間通信協会(SWIFT)からロシアを排除する案をめぐっては依然として足並みがそろわない。EUの外相にあたる外交安全保障上級代表のボレル氏は25日に「全会一致にならなかった」と明らかにした。ロシアとのエネルギー取引が多いEU加盟国が難色を示しているもようだ。
ただ、欧米メディアによると、フランスのルメール経済・財務相は25日、ロシアの排除案について「反対しているわけではない」と容認姿勢に転じた。同国はこれまで排除に慎重だった。ドイツのリントナー財務相も同日、排除を前向きに検討する姿勢を示したとロイター通信が伝えた。
(ワシントン=中村亮、ブリュッセル=竹内康雄、ロンドン=中島裕介)

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