英国王、初のクリスマス演説 「女王夫妻の不在感じる」

【ロンドン=中島裕介】英国のチャールズ国王(74)は25日、即位後初めてとなるクリスマスのメッセージ動画を公表した。9月に亡くなった母のエリザベス女王と2021年に死去した父・フィリップ殿下の思い出を述懐し「クリスマスは愛する人を亡くした私たちにとって大切な時期だ。季節の変わり目のたびに彼らの不在を感じる」と語った。
演説はエリザベス女王とフィリップ殿下が眠るウィンザー城の聖ジョージ礼拝堂で事前に収録された。
国王は演説で記録的な物価高に苦しむ国民や支援者にも思いを寄せた。「食料や寄付、必要な物資を提供してくれる親切な方々に賛辞をおくりたい」と語った。ストライキが相次ぎ安定した公共サービスの提供が不安視されるなかで、仕事に従事する軍の兵士や医師、救急隊員らにも称賛の言葉を贈った。
9月に即位したチャールズ国王は母のエリザベス女王が恒例としていたクリスマスのビデオメッセージの伝統を引き継いだ。女王は着席しての演説が多かったが、チャールズ国王は立ち姿勢で国民に呼びかけた。
英メディアは、メッセージ動画にカミラ王妃やウィリアム皇太子夫妻など限られた王室関係者しか現れなかったことに注目している。特にチャールズ国王の次男で20年に王室から離脱したヘンリー王子とメーガン妃は登場しなかった。最近では王子夫妻が出演して王室の内幕を暴露したネットフリックスの番組が波紋を呼んでいた。

英国の女王エリザベス2世が2022年9月8日、滞在先の英北部スコットランドのバルモラル城で死去した。96歳だった。在位70年7カ月は歴代の同国君主で最長。第2次世界大戦後の英国史のほぼ全てを見守り、亡くなる直前まで精力的に公務をこなした。
女王は1926年、後の国王ジョージ6世の長女として生まれた。国王が52年2月に急死すると、25歳という若さで女王に即位。在位期間は世界の存命中の君主でも最長だった。6月には在位70周年を祝う祝賀行事「プラチナ・ジュビリー」が行われた。