英、コロナ規制解除から4カ月 マスク姿はごく少数に

【ロンドン=佐竹実】英国の人口の大半を占めるイングランドで新型コロナウイルスの規制が解除されてから24日で4カ月がたった。人々はマスクなしの生活に戻り、爆発的な流行はいまのところ起きていない。米国が入国前の陰性証明を廃止するなど、コロナとの共生路線では各国が英国に続く。いまだ国境を開ききれない日本との違いが際立っている。
ロンドンのO2アリーナで23日に開かれた、米歌手ダイアナ・ロスさん(78)のコンサート。約2万人の観客の多くは年配だがノーマスクで、往年の名曲をともに歌い、踊って熱狂した。入場にはワクチン証明も必要なく、コロナ前と同じ光景だ。

「我々はコロナとの共生を学びながら、このウイルスが無くなることはないとはっきり認識する必要がある」(ジャビド保健相)として英政府が規制を解除してから4カ月。マスクをする人はごく少数派になったが、感染の急拡大は起きていない。検査で陽性になっても報告する義務はないため実際の感染者は統計の数字よりも多いとみられるが、風邪と同じような位置づけとして受け止められている。
病欠が増えて社会が回らなくなる事態にも今のところなっていない。むしろ、急回復した旅行需要に航空会社の人員確保が追いつかず、フライトがキャンセルになったり空港が混乱したりすることが問題となっている。コロナ禍を経て在宅勤務を希望する人が増えたほか、採用できたとしても空港スタッフは訓練などに時間がかかることもあり、混乱の解消には時間がかかりそうだ。

英政府がコロナ規制を解除したのは、変異型「オミクロン型」の流行で重症化率が下がったためだ。欧米諸国は手探りながらもコロナとの共生で英国に続く。
米国は12日から、入国前の陰性証明の提示を不要とした。米疾病対策センター(CDC)は国内でワクチンや治療薬が普及し、重症化や死亡のリスクが下がったことを受けて「流行が新たな段階に入った」との認識を示した。ニューヨーク市の劇場街ブロードウェーは7月から観客のマスク着用義務を解除する。
アジアも同様だ。タイは7月から外国人の事前申請手続きをなくし、ワクチン接種証明書か渡航前検査の陰性証明書を提示すれば入国できるようにする。マスク着用義務も解除する。パンデミック(世界的大流行)が終わったわけではないが、重症化率などのデータを見ながら通常に近づけようとしている。
一方で感染者数を重視する日本は、いまだに水際規制を続けている。6月から緩和したものの、1日の入国制限は2万人とコロナ前の7分の1程度にすぎない。科学的な知見に基づかずに長期間外国人を拒み続けることのマイナス面は小さくない。
世界の航空会社が加盟する国際航空運送協会(IATA)によると、国境封鎖の効果は感染のピークを数日遅らせるだけだった。世界保健機関(WHO)もかねて、国境を閉じずに経済を回しながら感染対策をすべきだと主張している。IATAのウィリー・ウォルシュ事務総長は「(各国の)政府は何のプランも持たず、オミクロン型にも過剰反応した」と批判している。