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ドイツ、格差是正・環境に左派色 12月に連立政権発足へ

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【ベルリン=石川潤】ドイツ社会民主党(社民党、SPD)、緑の党、自由民主党(FDP)が24日に連立政権の樹立で合意し、12月上旬に社民党のショルツ財務相が新首相に就任する見通しとなった。合意文書には格差是正、気候変動対応で踏み込んだ政策を盛り込み、左派色が強まる。メルケル時代に蜜月といわれた対中外交も変化する可能性がある。

177ページの合意文書に盛り込まれた政策のなかで、ショルツ氏が記者会見で真っ先に挙げたのが、最低賃金の時給12ユーロ(約1500円)への引き上げだった。現在の9ユーロ台からの大幅な引き上げで、恩恵は1000万人に及ぶという。9月の連邦議会選挙でも公約の目玉としてきた政策だ。

中道右派が主導したメルケル政権の16年間でドイツ経済は確かに成長したが、同時に格差も広がった。成長の恩恵が時間をかけて末端に広がる「トリクルダウン」の機能不全は、世界的な問題になっている。

政府による賃上げの強制は雇用を国外に逃がすだけとの批判もあるが、中道左派の社民党主導の新政権は思い切った実験に踏み切ることにした。

気候変動対策でも、野心的な目標が並ぶ。遅くとも2045年までに温暖化ガス排出を実質ゼロにするとして、これまで38年までとしていた石炭火力の廃止を30年に前倒しすることを目指す。30年の電力に占める再生エネルギー比率の目標は、これまでの65%から80%へと一気に引き上げる。

そのための手段として国土の2%を風力発電のために利用する。電気自動車は30年までに少なくとも1500万台普及させたい考えだ。ショルツ氏は会見の中で「進歩」という言葉を何度も繰り返した。温暖化ガス排出の実質ゼロに向けて、ドイツ経済の構造転換を急ぐ考えだ。

メルケル政権は気候変動対策に消極的で、それがドイツの自動車産業の環境対応の遅れにつながったとの批判がある。対策が避けられないのであれば、いち早く対応して経済への打撃を最小限に抑え、環境分野での主導権を狙うという発想に切り替えた。

外交も変化しそうだ。ショルツ氏は24日の会見で「フランスとの友好、米国とのパートナーシップ」が新政権の外交の基盤になると語った。欧州の中心に位置する経済大国として「強く自律した欧州連合(EU)」に貢献する。米国との協力が新政権にとって中心的な意味を持つとも強調した。

社民党は伝統的に欧州統合を推進する立場で、ショルツ氏自身も財務相として7500億ユーロ(約97兆円)の欧州復興基金の設立に貢献した親欧州派だ。9月には選挙直前にもかかわらずパリを訪問して統合推進派のマクロン氏と会談。24日の会見でも「私たちはなんとなく周辺にいてコメントする人たちとは違う」と語り、欧州統合に積極的に関わる姿勢を示した。

対中外交では、合意文書に「特に新疆での人権侵害」や香港で一国二制度がないがしろにされている問題を明記した。

中国やロシアの人権問題などで厳しい発言をしている緑の党のベーアボック共同党首の外相就任が有力で、メルケル時代の経済最優先路線がある程度修正される可能性がある。「自由で開かれたインド太平洋」への関与や日本などとの関係強化も盛り込んだ。

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