ウクライナ大統領、習氏と会談に意欲 仲裁案「協力も」

【リビウ(ウクライナ西部)=田中孝幸】ウクライナのゼレンスキー大統領は24日、首都キーウ(キエフ)で記者会見した。ロシアによる侵攻の終結に向け独自の仲裁案を示した中国の姿勢を歓迎し、中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席との会談にも前向きな姿勢を示した。一方で、ウクライナ全土からのロシア軍の撤退を含まない和平案は受け入れない方針を重ねて表明した。
ゼレンスキー氏は中国の仲裁案について、「国際法の尊重や領土保全(の原則)と合う考えがある。この点で中国と協力しよう」と述べ、一部を評価した。提案は具体的な和平計画ではなく「いくつかの考え方にすぎない」とも指摘した。
米欧を中心に中国によるロシアへの軍事支援に警戒が広がっている点については、「中国がロシアに武器を供与しないと信じている。これは私にとって極めて重要なことだ」と供与を控えるよう強く求めた。
習氏との会談については「私は習氏と会うつもりだ。両国に有益で世界の安全保障に寄与する」と語ったが、具体的な時期や場所には言及しなかった。
2022年2月24日のロシアによる侵攻開始前から、ウクライナと中国は経済面を中心に関係を深めてきた。ゼレンスキー氏の発言の背景には、大国である中国に配慮を示し、ロシア支援に傾斜することを防ぎたい思惑がある。
今後のロシアとの戦闘に関しては「支援国が課題をこなせば勝利できる」と指摘。西側各国に一層の軍事支援を呼びかけた。米欧がウクライナから離れた場合、ロシアが北大西洋条約機構(NATO)加盟各国にとって深刻な脅威になるとも主張した。
中国の仲裁案とは、同国外務省が24日に発表した「中国の立場」を示す文書だ。ウクライナとロシアの直接対話の再開を求め、中国が建設的な役割を果たす意欲をみせるが、具体策は記していない。「すべての国の主権と独立、領土の一体性の保障」など計12項目を並べ、核兵器の使用や原子力発電所への攻撃反対を表明した。
中国は欧州連合(EU)加盟国と隣接するウクライナを広域経済圏構想「一帯一路」の要衝と定め、関係強化を目指してきた。中国初の空母「遼寧」は、1998年にウクライナから購入した中古品を改造したものだ。中国製の新型コロナウイルスワクチンも積極提供していた。
21年6月の国連人権理事会で日米欧などの40カ国超が中国の新疆ウイグル自治区における人権状況に懸念を示す共同声明を提出した際、ウクライナは参加を見送った。中国側に配慮を示していた。
ゼレンスキー氏は米欧の支援継続に腐心している。ロシアの侵攻が長引き、米欧の有権者に「ウクライナへの過度な支援」を疑問視する動きが広がっている現状を警戒する。
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