スナク氏「深刻な経済的課題」 英新首相、市場は歓迎

【ロンドン=大西康平】英国のトラス首相の後任に25日、リシ・スナク元財務相(42)が就任する見通しとなった。24日の与党・保守党党首選出後の国民向け演説で「私たちは深刻な経済的課題に直面している」と訴えた。金融市場では国債に買いが入り歓迎ムードも漂うが、経済界からは財政の健全化に対する注文も出ている。
【関連記事】
スナク氏は「安定と団結が必要だ。私は誠実さと謙虚さを持って奉仕する」と語った。25日午前にもチャールズ国王から任命を受けて新首相に就任し、就任演説をする予定だ。アフリカから移住したインド系の両親のもとで英国で生まれ育ち、同国史上初めてのアジア系の首相となる。過去200年あまりで最年少の首相だ。
24日に党首選に出馬を表明していたモーダント下院院内総務が撤退し、無投票で選出された。同日の英国債市場では30年物国債の利回りが一時、前週末比約0.3%下落(価格は上昇)の約3.7%と約3週間ぶりの低水準となった。財政規律派のスナク氏の首相就任で、市場の混乱を招いた財政拡大策の転換が進むと期待された。
英キャピタル・エコノミクスのルース・グレゴリー・シニア英国エコノミストは「長引く政情混乱などによって経済へ大きな打撃を与えるリスクは後退したようだ」と指摘する。
もっとも経済界からは注文の声も出た。英産業連盟(CBI)のダンカー事務局長は「市場が家計や企業に与える影響の緩和や財政の信頼回復に向けて、新首相が無駄にできる時間はない」とした。英自動車工業会のマイク・ホーズ会長は「今必要なのは市場を安心させ、傷ついた消費者心理を回復させ、英国が投資可能であると見なされるようにすることだ」とコメントした。
※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。
この投稿は現在非表示に設定されています
(更新)