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EU、排出量取引対象を拡大へ 運輸・航空など 

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24日に始まったEU首脳会議(ブリュッセル)=AP

【ブリュッセル=竹内康雄】欧州連合(EU)は2050年までに温暖化ガスの排出を実質ゼロにするための制度改正に乗り出す。30年時点での削減目標引き上げに合わせて排出量取引制度(ETS)を拡充する。規制対象を国際航空や運輸などへ拡大することを視野に大幅削減を目指す。

EUは50年に排出を実質ゼロにするため、30年での削減目標を1990年比40%から55%に引き上げた。EUは新目標の達成のための対策について25日の首脳会議で討議した。首脳会議を受け、欧州委員会は7月に包括案を示す予定だ。フォンデアライエン欧州委員長は首脳会議後の記者会見で「ETSは最も費用効果が高い」と述べた上で「排出の大幅減に伴う社会的な影響に配慮しながら、ETS拡大を進める」と表明した。

具体的には国際線航空便や海運をETSの対象に加える。現在はEU域内を運航する航空便が対象だが、域内と域外を往来する航空便も対象にする。自動車などの運輸やビルなどで使われる暖房部門も対象にする検討も始まった。欧州環境庁によると、18年時点で国際線航空と海運はEUの排出全体のそれぞれ3%、運輸は22%、住宅・商業ビルは12%を占めた。

ETSでは、各企業などに二酸化炭素(CO2)といった温暖化ガスを出しても許される排出上限の「排出枠(キャップ)」が決められる。企業は省エネ推進や再生可能エネルギー導入などで、排出枠に実際の排出量が収まるよう努力する。上限を超えて排出すれば、余った排出枠を買い穴埋めしなければならない。

決められた上限以内に排出量が収まれば、余った分を売却することができる。欧州などでは排出枠を売買する取引市場が整備されている。市場を活用することで、企業は排出上限を守りやすい仕組みになっている。

EUの制度では、まずEUが域内全体の排出削減目標を設定する。産業ごとの排出データをもとに企業に無償か有償で排出枠を割り当てる。目標が達成できない企業には罰金制度もある。

EUでETSの対象は発電のほか鉄鋼やセメントといった炭素集約型の産業だ。1万強の施設が対象で、EUの温暖化ガスの約40%を占める。欧州委によると、対象の排出量は13年から19年までに約2割減った。現行制度では自動車などの運輸やビル、農業などは個別の排出規模が小さいため対象ではない。

EUが50年の排出の実質ゼロに向けた対策を打ち出すにつれ排出枠価格は上昇している。1年前は1トンあたり21ユーロ(約2800円)前後だったが、20年末ごろから上昇し足元では1トン当たり55ユーロ弱と過去最高水準だ。対策が強化されれば排出枠の需要が増えてさらに上昇するとの見方が多い。価格が上がれば企業は排出枠購入による負担を抑えようと、自社で排出削減を進める意識が働く。

ETSは炭素税と並び炭素の排出に価格を付ける「カーボンプライシング」の一つ。ETSは制度設計が複雑だが、最初に国や地域全体の排出削減目標を設定して、各企業などに割り当てるため排出総量が見通しやすい。化石燃料に課す炭素税は制度設計が比較的簡単だが、最終的にどの程度の排出減につながるか見込みにくい。

世界ではカーボンプライシングを導入する動きが広がっている。中国や米国の一部の州、英国やスイスなどは排出量取引制度を導入している。

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