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「殺人ロボ」、リビアで世界初使用か トルコ社は否定

STM社のドローン(2019年、イスタンブール)=アナトリア通信

【イスタンブール=木寺もも子】人工知能(AI)を搭載し、人間の判断を介さず自律的に標的を攻撃する「キラーロボット」がリビア内戦で使用されたとの疑いが浮上している。製造したトルコ社は取材に対し疑惑を否定するが、事実なら世界で初とみられる。戦場におけるAIの活用範囲が拡大する中、禁止や制限を巡る国際的な議論は遅れている。

米ニューヨーク・タイムズなど複数のメディアは6月、2020年3月に内戦下のリビアでAIを搭載したドローンが、逃げる民兵らを追って攻撃した可能性があると報じた。ドローンは内戦に軍事介入するトルコの軍事企業STM製の「カルグ2」で、人間の手を介さずに攻撃を行ったのが事実なら世界で初めてとなる。

疑惑の発端は、3月に公表された国連専門家パネルの報告書だ。報告書はカルグ2などのドローンを「自律的な殺人兵器」と表現し、「オペレーターとのデータ通信の必要なしに標的を攻撃するようプログラムされている」と述べた。キラーロボットとして使われたことを示唆しているが、国連はこれ以上の詳細な見解は明らかにしていない。

この疑惑に対し、STMのオズギュル・ギュレルユズ最高経営責任者(CEO)は日本経済新聞の取材に応じ、「オペレーターがボタンを押さない限り、標的を選んで攻撃することはできない」と否定した。同氏によると、AIの能力は航行や標的の種類判別に限られ、攻撃の判断はできないという。「倫理的に(攻撃の)過程には人間が関わるべきだと考えている」とも述べた。

カルグ2が完全自律のキラーロボットとして実際に使われたかどうかは専門家の間でも見解が分かれる。だが、多くの国が関与し、地上では民兵らが実際の戦闘を担うリビア内戦ではドローンが飛び交い、次世代型の戦争の「実験場」とも呼ばれてきた。

リビア暫定政府を支援するトルコはSTMとは別の軍事企業、バイカル防衛の「TB2」などを投入した。一方、敵対した武装組織「リビア国民軍(LNA)」側はアラブ首長国連邦(UAE)から提供された中国製ドローンを使用したとされる。トルコ製ドローンはリビアでの実戦投入を経てAIの性能を増し、20年秋にアゼルバイジャンがアルメニアを圧倒したナゴルノカラバフ紛争でも力を発揮した。

こうした中、キラーロボットを禁止・制限する国際的な合意は遅れている。各国や人権団体などは非人道的な兵器を規制する「特定通常兵器使用禁止制限条約(CCW)」の枠組みで14年から議論してきたが、具体的な成果は上がっていない。途上国などが規制に積極的なのに対し、高い開発能力を持つ米国、中国、ロシアなどが慎重な姿勢を示してきた。

キラーロボット 人工知能(AI)を搭載することで自ら攻撃目標を発見し、殺傷する兵器で、「自律型致死兵器システム(LAWS)」とも呼ばれる。完全な自律型キラーロボットはまだ実戦配備されていないとされるが、一定の自律性を持つ兵器の導入は急速に進んでいる。戦場に送り込む兵士の人的被害を減らす期待がある一方、人間が介在しない戦争の倫理性や、誤った攻撃が行われた場合の責任の所在などが問題として指摘されている。

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