NATO加盟「期待するな」 トルコ大統領、スウェーデンに

【イスタンブール=木寺もも子】トルコのエルドアン大統領は23日、スウェーデンの北大西洋条約機構(NATO)加盟について、トルコの批准を「期待すべきでない」と強い言葉で警告した。スウェーデンでイスラム教の聖典コーランに火を付ける極右デモが行われたことに反発した。早期の加盟実現は困難になりつつある。
エルドアン氏は国民向けのテレビ演説で、「このような冒瀆(ぼうとく)行為を許す国は、もはやNATO加盟で我が国の支持を期待すべきでない」とスウェーデンを非難した。「テロリストやイスラムの敵がそんなに好きなら彼らに安全保障を委ねればいい」と突き放した。
問題にしたのはストックホルムのトルコ大使館前で21日、反移民などを掲げるデンマークの極右政治家がコーランに火を付けた騒ぎだ。トルコはこのデモ行為を止めるようスウェーデンに求めたが、警察当局は許可したという。
スウェーデンやフィンランドが目指すNATO加盟にはトルコを含む既存の全加盟国の承認が必要だ。トルコは2022年6月のNATO首脳会議でいったん加盟への賛意を示したが、両国でトルコから分離独立を目指すクルド系テロ組織が活動しているなどとして、正式な批准にあたっては、トルコがテロリストと主張する活動家の引き渡しなどの条件を付けた。
トルコと北欧2国は6月に結んだ合意に基づき交渉を続けてきた。2国は法律改正などでテロ対策を強化したが、活動家の引き渡しを巡ってはなお溝がある。今回の事件を受けてトルコの世論は硬化し、5月に行われるトルコ大統領選・議会選までに加盟が実現する見込みはさらに低くなった。
フィンランドのハービスト外相は24日、ロイター通信に対し、「混乱が収束するまで3カ国による協議は小休止が必要だ」と語った。フィンランドが単独で加盟を目指す可能性については「その議論をする必要はないと考えている」とした。
米国務省のプライス大統領報道官は23日、北欧2国のNATO加盟を改めて支持した。エルドアン氏の発言が交渉の打ち切りを示すものかどうかは言及を避けたうえ、2国がトルコとの合意に達しなければいけないとの見解を示した。
トルコは27日にアンカラで予定していたスウェーデンとの国防相会談を中止することも既に表明している。スウェーデンのクリステション首相は「表現の自由は民主主義の基幹だが、合法だからといって適切とは限らない」などと極右のデモ行為自体は非難する姿勢を強調した。