/

巨大IT企業の決済支配、BIS幹部「金融システム脆弱に」

オンラインでインタビューに応じたBISのヒュン・ソン・シン氏(BIS提供)

【ベルリン=石川潤】国際決済銀行(BIS)は23日に中銀デジタル通貨(CBDC)の新しい報告書を公表した。日本経済新聞のインタビューに応じたBISの調査部門トップ、ヒュン・ソン・シン氏は、決済ビジネスで存在感を増す巨大IT企業(ビッグテック)が「金融システムの脆弱性」につながりかねないと警告。より開かれたインフラとして中銀デジタル通貨(CBDC)の導入に取り組んでいくことが必要だと強調した。

シン氏が指摘したのは「排他的にデータを利用するビッグテックのモデル」の問題点だ。データを囲い込むことで限られたプレーヤーの市場支配力が高まり、手数料の高止まりなどの独占・寡占の弊害を招きやすくなる。金融システムも不安定になる恐れがあるという。

シン氏は「より競争的で開かれたプラットフォーム」を築くことが、利用者の増加とコストの低下、サービスの改善という好循環につながると語った。念頭にあるのが、中央銀行が基礎的なインフラを提供し、民間企業がその土台のうえで決済サービスを提供するCBDCだ。

シン氏は「中央銀行は金融システムにおけるその役割を限定的にすべきだ」と語った。中銀は開かれたプラットフォームやデータガバナンスなどに専念し、民間部門が財布(ウォレット)の提供などのサービスを担う「二層構造」こそが、中銀デジタル通貨が成功するカギになるという。

CBDCが国境を越えた決済にも使われるようになれば「金融の仕組みをシンプルにする」ことでコストの大幅な低下などが見込まれる。複数の国のCBDCをつなぐ「マルチCBDC」という仕組みができれば、「より大きな顧客基盤を決済の領域にもたらす」ことになるという。

CBDCを巡っては、2022年の発行を目指す中国が先行しており、中国警戒論も強まっている。ただ、シン氏は「デジタル人民元の設計は他国の金融システムを脅かすようにはなっていない」と指摘した。

デジタル人民元を持つにはデジタルIDを使った口座が必要で、仮に口座を取得できても、各国中銀が自国内での使用を制限できるためだ。デジタル人民元がブラックマーケットに流れ込み、その国の通貨にとって代わるというイメージは「間違った類推」と話した。

シン氏は「歴史を振り返れば、米ドルや英ポンドが国際通貨になったのは、安全な決済が必要な貿易決済や金融取引で基本となる利用があったからだ」と語った。デジタル通貨になるだけで国際通貨になれるわけではないとし、中国への過度の警戒論には懐疑的な見方を示した。

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

関連トピック

トピックをフォローすると、新着情報のチェックやまとめ読みがしやすくなります。

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン