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トルコ大統領、米独仏など10大使の追放警告

人権巡る声明に反発 支持率低迷で対外強硬加速か

(更新)

【イスタンブール=木寺もも子】トルコのエルドアン大統領は23日、米独仏など10カ国の駐トルコ大使を国外追放すると警告した。トルコが拘束する著名な人権活動家の釈放を求める共同声明への対抗措置とみられる。エルドアン氏は低迷する支持率回復に向けて強硬策を打ち出しているが、対外関係の悪化や経済の低迷を招く悪循環に陥っている。

「10大使をただちに『ペルソナ・ノン・グラータ(好ましからざる人物)』にするよう外相に指示した」。エルドアン氏は23日に北西部エスキシェヒルで行った演説でこう述べた。10カ国とは米独仏のほか、カナダ、フィンランド、デンマーク、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、スウェーデン。

発言のきっかけとなったのが、トルコ人の実業家・人権活動家であるオスマン・カバラ氏を巡り、10大使館が釈放を求める共同声明を発表したことだ。

カバラ氏の拘束は近年の米欧とトルコの間の火種の一つだった。カバラ氏は2013年の大規模デモや16年のクーデター未遂を支援したなどの疑いで、裁判で有罪が確定しないまま4年にわたって拘束されている。19年にはトルコも加盟する欧州人権裁判所がカバラ氏の釈放を命じ、欧米はこれまでも判決の履行を何度も促していた。

今月18日には10カ国の駐トルコ大使館が共同声明で「民主主義の尊重、法の支配、透明性を巡り、トルコの司法制度に影を落としている」などとしてカバラ氏の釈放を求めた。トルコ側は自国の司法への干渉だとして反発し、10大使を呼び出して抗議。その後、エルドアン氏の警告へとつながった。

トルコ外務省は実際に大使を追放するかどうかについて、コメントしていない。欧州議会のサッソリ議長はツイッターで「大使らの追放はトルコ政府の強権化の表れだ」と批判した。ロイター通信によると、米国務省の報道官は「トルコ外務省に詳細を確認中だ」と述べた。

10カ国の多くは北大西洋条約機構(NATO)の同盟国や主要な貿易相手でもあり、大使追放は極めて異例だ。実行すれば相手国も同様の措置を取る可能性があり、外交・経済の両面でのマイナス影響は計り知れない。

エルドアン氏がこのタイミングで対外的に強硬な対応を示したのは、低迷する支持率への焦りがあるとみられる。23年に控える大統領選・議会選の前倒し説もくすぶるなか、各種世論調査で与党支持率は過去最低に沈み、連携を模索する主要野党の合計を下回っている。

通貨リラの下落でエネルギーをはじめとする輸入物価が高騰し、国民は政府統計で20%近いインフレに不満を募らせている。エルドアン氏は「金利を下げればインフレ率は下がる」という説を主張しており、景気を刺激しようと中銀に幹部の解任などで圧力をかけ、21日には主要政策金利の大幅利下げも実施させた。

一連の強硬策が支持の回復につながるかは不透明だ。エルドアン氏の主張は経済学の主流の考えとは正反対で、むしろインフレを促しかねない。中銀への露骨な介入や利下げを受け、リラは連日のように対ドルの史上最安値を更新している。年初からの下落幅は2割を超えた。

強硬な外交姿勢は、米欧に反感を抱く一定の支持層を喜ばせる効果はある。一方で米欧を中心とした対外関係の悪化はさらなるリラ安やインフレを招きかねない。思うような政策効果が得られなければ、支持率低下に拍車がかかりかねない。

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