英HSBC、20年の純利益35%減 与信費用かさむ

【ロンドン=篠崎健太】英銀大手HSBCホールディングスが23日発表した2020年12月期決算は、純利益が前の期比35%減の38億9800万ドル(約4100億円)だった。低金利環境で融資の利ざやが縮んだうえ、焦げ付きに備えて計上する与信費用が新型コロナウイルス禍で膨らみ、2年連続で最終減益となった。
純金利収入は9%減の275億ドルだった。コロナ危機対応で世界的に大規模な金融緩和が図られ、市場金利が低下したことが響いた。預貸の利ざや水準を示す純金利マージンは1.32%と0.26ポイント下がり、悪化幅は19年の0.08ポイントから急拡大した。
貸倒引当金などの予想信用損失は88億1700万ドルと3.2倍に膨らんだ。コロナ禍による経済環境の悪化が響いたものの、期中に示していた「80億~130億ドル」の予想範囲の下方にとどまった。各国の経済政策の効果に加え、中国で景気回復が早期に進んだことも支えになったようだ。
HSBCは20年2月、従業員の15%にあたる約3万5千人の削減などのリストラ策を打ち出し、アジア地域や富裕層向けビジネスに経営資源を厚く配分する戦略を進めている。撤退観測がくすぶっている米国の個人向け金融(リテール)事業については、今回の決算説明資料で「選択肢を検討している」と説明した。
21年12月期については、予想信用損失が「20年12月期をかなり下回る」との見通しを掲げた。ノエル・クイン最高経営責任者(CEO)は「21年はよいスタートを切れた。慎重ながら楽観的だ」とコメントし、ワクチン接種の展開による世界経済の回復に期待を示した。
英金融当局が大手銀に株主還元を容認すると表明したのを受け、20年10~12月期分から四半期配当を再開することを決めた。