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ポルトガル、30日総選挙 次期政権発足に時間も

【パリ=白石透冴】ポルトガルは30日、前倒し総選挙(一院制、定数230)を実施する。新型コロナウイルス禍からの復興などが争点で、中道左派の与党社会党が支持率で首位に立つ。ただどの党も過半数を取れず、次期政権発足には時間がかかるとの見方がある。

「ポルトガルの安定にはわが党が過半数を取るのが最もよい」。コスタ首相は17日、地元テレビで語った。コロナ禍で傷ついた経済の立て直しには2015年から政権を維持する、自身が率いる社会党が現在の108議席から上積みする必要があると訴えた。

ポルトガル議会の任期は4年。次期総選挙は23年の予定だったが、議会が22年度予算案を認めず政権運営が行き詰まった。

社会党に閣外協力してきた急進左派「左翼ブロック」や共産党系政党などが予算案は「国民の暮らしを十分に守っていない」などとして、賛成票を投じなかったのが理由だ。レベロデソウザ大統領は21年11月に解散総選挙を決めた。

第1次世界大戦後に実権を握ったサラザール首相(当時)が築いた独裁体制が終わった1974年の「カーネーション革命」以来、同国では二大政党制が続いてきた。革命後の予算案否決は今回が初めて。

ポルトガルはギリシャに端を発した欧州債務危機の当事国の一つ。コスタ氏は緊縮を避けながら予算の組み替えなどで社会福祉の拡充を図り、失業率を15年の約14%から現在の6%まで下げた実績などが評価されてきた。

選挙戦でコスタ氏は月705ユーロ(約9万円)の最低賃金を26年までに900ユーロに段階的に引き上げることなどを掲げる。

経済協力開発機構(OECD)による経済成長率の予測によると、22年に6%、23年に3%と回復軌道にあるが、コスタ氏はコロナ禍で収入減などに陥った人への支援が不可欠だと訴える。

EUのコロナ復興基金を使い、医療制度や社会保障システムを拡充することも決めている。コスタ氏が続投すれば、社会福祉と財政規律の両立を目指す路線が継続する。

最大野党で中道右派、社会民主党のリオ党首はコスタ氏の手法では低成長が続くだけだと批判する。現在21%の法人税率を24年までに17%に下げると公約に掲げた。「雇用をつくり出すのは企業だ」と語り、経済界寄りの姿勢を明確にする。

政治サイト、ポリティコのまとめによると、支持率は社会党が37%で首位、社会民主党が32%で2位となっている。いずれも単独での過半数獲得は困難な情勢だ。

コスタ氏は左派政党との閣外協力継続を通じた政権維持を探るとみられるが、予算案否決で悪化した関係を修復できるかが焦点となる。首相選出には時間がかかるとの見方が出ている。

仮に政権交代が起きても外交面の大きな変化はなさそうだ。いずれの政党も欧州連合(EU)とは協調する姿勢を示しているためだ。

コスタ政権は18年に中国の広域経済圏構想「一帯一路」に協力するとの合意文書に署名した。与野党ともに中国からの投資に期待する声は根強く、対中強硬に傾く東欧・バルト諸国と異なり、安定した対中関係を模索する見通しだ。

欧州政界の関係者が懸念するのが19年に誕生した新興右派ポピュリスト政党「シェーガ」の伸長だ。ポルトガル語で「もうたくさんだ」との意味で、既存政治への不信感などを訴え議席を現在の1から積み上げる可能性がある。支持率は7%と第3政党の立場をうかがう。

欧州委員会によると、ポルトガルの公的債務残高は22年に国内総生産(GDP)比124%となる見通し。ギリシャ、イタリアに次ぐ高い数値だ。政治空白が長引くことは、EU全体にとってもマイナスの影響をもたらしかねない。

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