気候変動、金融機関に深刻な影響 ECBが調査結果公表

【ベルリン=石川潤】欧州中央銀行(ECB)は22日、ユーロ圏経済への気候変動の影響を分析する調査結果を公表した。気候変動への対応がなされない場合には「ユーロ圏の銀行は深刻な影響を受ける可能性がある」と指摘。デギンドス副総裁は声明文で「早期に、徐々に対応を進めていくことが重要で、移行や自然災害によるコストを軽減できる」と呼びかけた。
調査は「気候ストレステスト」と名付け、世界の400万社以上、1600のユーロ圏の銀行への気候変動の影響を3つのシナリオに沿って分析した。企業も銀行も温暖化対策をいち早く受け入れ、温暖化ガス排出ゼロ経済への移行を進めることで明らかな利益が得られるとの結果が出たという。
気候変動には自然災害の頻度や規模が拡大することによる物理的なリスクと、温暖化対策を進めるためのコストが膨らむ移行リスクがある。対策をしなければ移行に伴うコストはほとんどないが、物理的なコストが大きく膨らむ。計画的に移行を進めていくことが、コストを最小にとどめると結論づけた。
欧州の銀行は温暖化対策をしなければ、不良債権処理損失が自然災害の増加によって大きく膨らむことになる。2050年には計画的に移行を進めた場合に比べて、債務不履行の発生確率が8%も高まるという。
ECBは21年3月に調査の暫定結果を公表していた。ECBは今回の結果を活用して、22年に大手銀行への金融監督上の気候ストレステストを実施する。

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