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欧州委、新型コロナ復興基金の「財源」に炭素税など3案

【ブリュッセル=竹内康雄】欧州連合(EU)の執行機関、欧州委員会は22日、新型コロナウイルスの復興基金の資金を調達する債券の償還に向け、国境炭素税など3つの財源案を公表した。最大で年170億ユーロ(約2兆2000億円)を見込む。積極財政で景気を下支えする一方、財源確保で財政健全化への道筋を示す。

EUは2020年7月、新型コロナで落ち込んだ加盟国の経済を支えるため、7500億ユーロ規模の復興基金の設立で合意した。これは18年価格で算出した規模で、名目額では8000億ユーロ強になる。内訳は返済を求めない補助金形式が約4200億ユーロ、返済義務のある融資形式が約3850億ユーロだ。

欧州委は全額を市場から調達する計画で、すでに債券の発行を始めた。58年までに償還する計画だ。

債券で調達した資金の償還には新たな財源が必要だ。欧州委は排出量取引、国境炭素調整措置(国境炭素税)、多国籍企業への課税という3つの財源を想定。最短で23年に一部を導入する計画だ。軌道に乗る26~30年の年平均で最大170億ユーロの収入になると試算する。

収入の一部は、クリーンエネルギーへの移行など気候変動対策に伴う影響を軽減する社会気候基金(722億ユーロ規模)にあてる。

3つの財源のうち最大規模は、排出量取引からの収入だ。EUは二酸化炭素を排出できる権利の「排出枠」をオークション形式で企業に販売している。現在は収入の大半が加盟国に入る。今回の提案では、収入の4分の1をEU予算に組み入れる。最大で年120億ユーロを見込む。

国境炭素税は環境規制の緩い国からの輸入品に事実上の関税をかける措置だ。欧州委が7月に具体案を公表した。この4分の3をEUの予算に組み入れ、年10億ユーロを期待する。

多国籍企業への課税は、経済協力開発機構(OECD)での合意に基づき、デジタル分野が中心になる。EU加盟国はその税収の15%をEUに拠出する。年25億~40億ユーロになるという。

独自財源の拡大はEUの悲願だ。現在は関税や付加価値税の一部だけで、EUの予算の7割を加盟国からの拠出が占める。EUは、予算における独自財源の割合を高められれば、政策決定での裁量が大きくなると考えている。

欧州委の提案は今後、加盟国と欧州議会で議論される。欧州委メンバーのハーン欧州委員(予算担当)は22日の記者会見で「加盟国がこの案を支持すると確信している」と語った。だが、なお曲折はありそうだ。欧州委の提案が通れば、加盟国の歳入が減り、EU本部の権限が強まる。慎重な姿勢の加盟国は多い。

欧州委は今回の提案が「加盟国の財政主権を侵してはいない」と主張するが、線引きが微妙な領域にあるのは間違いない。

仮に合意できなければ、金融市場がEUの財政の持続性に疑問符をつけかねない。新たな財源を捻出できなければ、最終的には加盟国が債券の償還に責任を持たねばならず、結果として歳出増につながる可能性もある。

欧州委によると、ユーロ圏の21年の公的債務は域内総生産(GDP)比100%と、新型コロナの感染拡大前の19年に比べ14ポイント膨らむ見通しだ。加盟国のなかでも財政基盤の弱いスペイン、イタリアなど南欧諸国は大きなダメージを受ける。

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