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中銀デジタル通貨、国際化に道 民間決済サービスの土台に

中国は2022年の中銀デジタル通貨の導入を目指している=ロイター

各国の中央銀行が加盟する国際決済銀行(BIS)は23日、中銀が発行するデジタル通貨(CBDC)について新たな報告書をまとめた。国境をまたぐ取引で3つの類型を挙げ、国際化の可能性を示した。資金洗浄などの犯罪を防ぐため、デジタルIDに基づく本人認証が重要との考えも明記。巨大IT企業が閉じた決済網を築くのではなく、CBDCというインフラを土台に決済サービスを競うべきだとの思惑を強く反映した。

BISは2020年10月に最初の中銀デジタル通貨に関する報告書をまとめ、現金との共存などの原則を定めた。日本経済新聞とのインタビューに応じた調査部門トップのヒュン・ソン・シン氏は「原則の議論を超え、設計の選択肢の詳細な分析を提供する」ことが今回の報告書の目的だと説明した。

報告書の柱のひとつが、国境を越えるCBDCのやり取りだ。CBDCを発行済みのカンボジアとバハマは国内でしか流通していない。全世界の送金は過去10年で6割増えており、欧米がドル・ユーロ建てで発行する過程ではどう国境を越えて取引するかの議論を避けて通れない。報告書では「CBDCが国際決済の改善に道を開きうる」とし、国際協力による決済効率化への意欲を示した。

具体的には、各国のCBDCを結びつける「マルチCBDC」と呼ぶ仕組みについて、3つの類型を示した。複数のCBDCがひとつのプラットフォーム(基盤)で動く「統合型」、CBDC同士を共通の決済システムなどを使ってつなぐ「連結型」、技術や規制上の基準をそろえる「互換型」だ。

決済の効率化などの効果が最も高いのが「統合型」だが、その分だけ国際協調のハードルは上がる。中銀を対象にした調査では、今のところ「連結型」の人気が最も高く、次に「互換型」、3番目が「統合型」となっている。

国境を越えた資金のやり取りが簡単になれば、資金洗浄などの犯罪の温床になったり、途上国で先進国のCBDC保有が増えて金融が不安定になったりするリスクがある。報告書では、デジタルIDと呼ばれる電子的な本人認証の仕組みを使って口座を管理することで、リスクは最小限に抑えられるとした。

ビットコインや巨大IT企業の決済システムについては「公益に反する傾向がある」と指摘した。特に巨大IT企業については囲い込んだ大量のデータで競争力を高め、市場で「支配的な地位」を築く可能性があり、クレジットカード以上の高い手数料につながる恐れがあると警鐘を鳴らした。

報告書が強調したのが、開かれた競争の重要性だ。多くの金融機関がCBDCを土台にしたサービスに参入できるようにすれば、コスト低下や技術革新につながる。CBDCを導入する場合、中銀の役割はインフラの構築など最小限にとどめ、利用者へのサービスの提供は民間金融機関に任せる「2層構造」が必要との考え方も明記した。

報告書は、BISと中銀デジタル通貨の共同研究を進める日米欧中銀の議論に影響を与えそうだ。主要7カ国(G7)の財務相・中銀総裁は5日公表の声明文に、CBDCが「越境決済を強化しうる」との文言を盛り込んだ。発行時に見込まれる利点の一つが安価で迅速な国際送金システムの実現にあるという認識は共有されつつある。

日銀は5月の報告書で「CBDC同士が円滑かつ安全に交換できるよう、標準化を通じた相互運用性や信頼性の確保の検討を進めることは有用」と指摘した。米連邦準備理事会(FRB)のブレイナード理事も5月の講演で「国際基準の開発に最初から関与することが重要だ」と語った。今夏にFRBが公表するデジタル通貨の報告書でも、国際的な利用をどこまで視野に入れるかが焦点になる。

(ベルリン=石川潤、斉藤雄太)

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