北アイルランド問題解決策、英下院で可決 元首相ら反対

【ロンドン=中島裕介】英議会下院は22日、欧州連合(EU)と合意した英国のEU離脱に伴う英領北アイルランドの通商ルールを巡る対立の解決策を賛成多数で可決した。野党もスナク政権の提案に賛成したため、下院定数650に対し512人が賛成した。一方で北アイルランドがEUルールから完全に脱却できないなどの理由で、ジョンソン元首相やトラス前首相は反対票を投じた。
北アイルランド政治の主力政党である親英国派の民主統一党(DUP)の大半も反対した。政権を握る保守党からは反EU派を中心に約20人が反対した。ただ英メディアは「スナク政権に大きな打撃にはならなかった」と分析している。
英国とEUは2月末に、英本土から北アイルランドへの品物の輸送に関して、最終目的地別に品物を分類したうえで、同地にとどまる商品の通関上の手続きをほぼ廃止すると決めた。EUが新ルールを加盟国に適用する際に、北アイルランドの地方議会がそれを拒否する意思を示せる仕組みも加わった。
英・EU間の離脱時の取り決めは、陸続きのEU加盟国アイルランドと北アイルランドの間に物理的な国境を置かず、離脱後も北アイルランドを事実上、EUの単一市場に残した。北アイルランドの帰属を巡る親英派と親アイルランド派の過去の紛争を再燃させないための措置だ。
だがこのルールにより、同じ英国内にもかかわらず、英本土から北アイルランドに入る品物には通関検査が導入されるなど、英本土との間に「経済上の国境」が生まれていた。