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バイデン氏、オスマン帝国の「虐殺」認定 トルコ反発

(更新)
バイデン政権の外交は人権重視を鮮明にしている=AP

【ワシントン=中村亮、イスタンブール=木寺もも子】バイデン米大統領は24日、第1次世界大戦中の1915年にオスマン帝国(現トルコ)で始まったアルメニア系住民の殺害を「ジェノサイド(民族大量虐殺)」と表現した。政権が掲げる人権重視の流れを鮮明にしたが、同盟国のトルコは強く反発しており、関係修復は困難さを増す。

追悼記念日の24日に合わせた声明で「150万人のアルメニア人が絶滅政策で追放・殺りく・死の行進」に追いやられたと述べた。米大統領は例年、犠牲者を悼む声明を出していたが、ジェノサイドという言葉を使うのはレーガン元大統領の就任1年目以来、40年ぶりだ。

24日、犠牲者を悼むアルメニア教会の指導者ら(エレバン)=AP

100年前の事件に対し制裁などの具体的な措置は考えにくいが、トルコは「最も強い言葉で拒絶、非難する」などと反発した。通貨リラは報道が出た前週、ドルに対して3.8%下落した。

北大西洋条約機構(NATO)の同盟国トルコの反発を押し切ってバイデン氏が認定に踏み切った背景には、政権内で人権重視派の勢いが増していることがある。ワシントン近東政策研究所のソネル・チャアプタイ氏は、これまでは国防総省を中心にトルコとの戦略的関係を大統領に訴えて思いとどまらせていたと指摘。現在はこうした勢力が衰退したとみる。

オバマ元大統領は2008年の大統領選でジェノサイド認定を公約したが、在任8年間を通じて棚上げした。バイデン氏も20年の大統領選で認定を公約しており、政権の発足早々に実現した。

民主党のバイデン政権は外交政策で人権擁護を柱に据える。2月にはサウジアラビア人記者殺害事件について同国の実力者ムハンマド皇太子の関与を断定した。トランプ前政権が下した「推定無罪」との結論を覆した。党内で力を増すリベラル派が人権重視を強く訴えており、バイデン氏は対応を迫られている。

パレスチナ問題では、トランプ前政権が凍結した国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)への資金拠出再開を決めた。イスラエルは反発しており、前政権時代の蜜月関係は急速に冷え込んでいる。

強権的な同盟国との間に広がる溝は、米国の中東関与が薄まっていることも象徴する。米軍が利用するトルコ南部のインジルリク空軍基地は、過激派組織「イスラム国」(IS)掃討作戦の拠点だった。ISの崩壊で、トルコの戦略的価値は低下している可能性がある。米軍はイランを念頭にトルコへ核兵器を配備しているとされるが、バイデン政権はイランとの対話を進めている。

ただ、米国の認定によって、トルコはロシアに一段と接近する可能性がある。トルコは19年にロシア製の地対空ミサイル「S400」を導入し、第2弾の搬入も検討している。NATOの仮想敵国ロシアとの軍事協力強化に動くトルコに対し、米国は強く反発しており、実戦配備を完了すればトルコに対する追加制裁が現実味を帯びてくる。

3月には中国の王毅(ワン・イー)国務委員兼外相がトルコやサウジなど中東6カ国を訪問し、関係の強化を打ち出した。

バイデン氏は23日、トルコのエルドアン大統領と初めて電話協議した。認定やその理由を事前通告したとみられ、過度な反発を和らげる思惑が透ける。ベルギーの首都ブリュッセルで6月に開くNATO首脳会議に合わせて会談することを申し合わせており、対話を維持する方針だ。

▼アルメニア人殺害事件 オスマン帝国時代のトルコでキリスト教徒のアルメニア系住民が殺害された事件。第1次世界大戦中の1915年4月24日、敵国のロシアと内通したとされるアルメニア系知識人らが逮捕されたうえ、現在のトルコ東部にいた多くの住民がロシア国境近くからシリアへの過酷な強制移住などによって死亡した。アルメニア側は17年ごろまでに150万人が虐殺されたと主張する。トルコは強制移住やアルメニア系との戦闘で双方に犠牲が出たとし、特定民族に対する計画的な大虐殺(ジェノサイド)とは認めていない。アルメニア系が一定の影響力を持つ欧州議会、米議会などは事件をジェノサイドと決議している。

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