ドイツ・フランス首脳、結束演出 欧州安定へ亀裂回避 - 日本経済新聞
/

ドイツ・フランス首脳、結束演出 欧州安定へ亀裂回避

【パリ=北松円香、ベルリン=南毅郎】ドイツとフランスが関係改善に向けて動き出した。防衛戦略やインフレ対策で食い違いが目立っていたが、22日には独仏協力条約(エリゼ条約)の記念式典などで結束を演出した。ウクライナへの戦車供与ではなお隔たりがあるものの、欧州の安定には独仏の連携が欠かせないとの危機感の共有が背景にある。

「両国は歴史と運命における双子だ。フランス人がドイツについて語るときは自らについても語ることになる」。この日ソルボンヌ大学で開いたエリゼ条約の60周年記念式典で、マクロン大統領は複雑に絡み合う両国の歴史の深さを強調した。式典には両首脳に加え、両国の議員も出席。ドイツから100人超がパリを訪れた。

1963年に当時の西ドイツのアデナウアー首相とドゴール仏大統領が締結したエリゼ条約は、その後しばしば独仏友好を演出する機会として利用されてきた。2003年には当時のシラク仏大統領とシュレーダー独首相が同条約の40周年式典で関係改善を強調。エリゼ条約締結から56年目の19年には、独首相だったメルケル氏とマクロン氏が両国のさらなる協力をうたうアーヘン条約を締結した。

演出は大規模な式典開催にとどまらない。マクロン氏とショルツ首相は式典開催の直前に独仏の新聞に連名で寄稿し「(ウクライナ侵攻の)初期から我々は素早く力強く対応してきた」と強調した。式典の後開いた両国閣僚の合同会議では安全保障や気候変動対策からパリ・ベルリン間の直行列車の推進まで、あらゆる分野で協力を打ち出した。

エネルギーでは、昨年12月に決まったスペイン北東部からフランス南部に水素を運ぶ海底パイプライン構想をドイツまで延長することで合意した。東欧やインド太平洋で両国軍の合同演習を実施するほか、欧州の産業競争力強化に関する協力も申し合わせた。

両国首脳が関係の深さに繰り返し言及するのは、昨年来のギクシャクした雰囲気の裏返しだ。昨年にはドイツが英国など北大西洋条約機構(NATO)加盟国との防空システム構築を発表した。「欧州が戦略的自立を重視することを望む」(仏大統領府筋)というフランスには受け入れづらい構想だった。

ドイツが打ち出した2000億ユーロ(約28兆円)の総合インフレ対策も、他の欧州各国との格差を生むとして仏の反発を招いた。マクロン氏は「ドイツの孤立は同国にとっても欧州にとってもよくない」とおおっぴらに批判を口にした。定期的に開催するはずの両国の閣僚会議は昨年、2回も先送りされた。

だが自分たちの対立が欧州の将来を危うくすることは、両国とも承知している。フランスは今月、24〜30年の国防予算を19〜25年比で4割も増やす方針を打ち出すなど欧州の安全保障への危機感を強める。「我々の共通点を強くし、これ以上は分裂を許さない責任を負う」。ショルツ氏はこの日の合同会議にあわせて訴えた。

仏ルモンド紙は23日、両首脳が2国間の関係の深さを強調したものの、ウクライナ支援や欧州、エネルギーなど喫緊の課題について「有効な提案は何も生み出せなかった」と評した。

春割ですべての記事が読み放題
有料会員が2カ月無料

セレクション

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン

権限不足のため、フォローできません