独ボッシュ、燃料電池に1300億円投資 独中で生産

【フランクフルト=深尾幸生】自動車部品世界最大手の独ボッシュは22日、2024年までに燃料電池に10億ユーロ(約1300億円)を投資すると発表した。自動車向けと発電用の定置型の両方を開発・生産する。温暖化ガスを実質ゼロにするカーボンニュートラルの実現には電気自動車(EV)だけでは不十分として水素を使う燃料電池の需要が高まるとみている。
燃料電池車(FCV)向けに6億ユーロ、データセンターや工場への電力供給に使う定置式に4億ユーロをそれぞれ投資する。FCV向けはドイツと中国で生産する。中国では商用車メーカーの慶鈴汽車集団(重慶市)と合弁会社を設立し、中国の自動車メーカー向けに燃料電池システムを生産・販売する。まず年内に慶鈴汽車が70台の燃料電池トラックの試験車両を出荷する。
ボッシュのフォルクマル・デナー社長は「電動化も進めるが、水素にも備えている」と強調し、欧州連合(EU)の政策がEV偏重だと批判した。独フォルクスワーゲン(VW)や独メルセデス・ベンツなどEVに集中しFCVから距離を置く自動車大手とは一線を画する。
定置型の燃料電池は、年内に100カ所に導入する。3月には独南部バンベルクで、同市の電力会社向けに納入した燃料電池が稼働した。ボッシュは水素への期待が高まるなか、30年には燃料電池の市場が180億ユーロに成長するとみて投資を強化する。
ボッシュが同日発表した2020年の売上高は前年比6%減の715億ユーロだった。自動車部品部門や産業部門は2ケタのマイナスだったが、家電や電動工具などの消費者向け製品部門が5%増え下支えした。営業利益に相当するEBIT(利払い・税引き前利益)は20億ユーロと1%減った。
21年については新型コロナウイルスからの回復が十分ではないと予想する。特に欧州が弱く、世界の自動車生産は19年の9200万台を相当下回るとみている。半導体不足の影響も今後数カ月にわたると警戒している。