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EU、30年ぶり対中制裁決定 ウイグル人権問題で

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中国とEUの投資協定には批判が強い(20年12月の中国とEU首脳によるテレビ会議)=AP

【ブリュッセル=竹内康雄】欧州連合(EU)は22日開いた外相理事会で、中国での少数民族ウイグル族の不当な扱いが人権侵害にあたるとして、中国の当局者らへの制裁を採択した。対中制裁は約30年ぶりで、同日付で発動した。ブリンケン米国務長官が同日から就任後初めて欧州を訪問するのに合わせ、協調姿勢をアピールする狙いがありそうだ。

EUが中国に制裁するのは、EUの前身組織の時代を含めて、1989年の天安門事件以来だ。EU内の資産凍結や域内への渡航を禁止する。新疆ウイグル地区の幹部ら中国当局者4人と1団体を制裁対象とした。多くのウイグル族が不当に拘束されているほか、労働や不妊手術を強制されているのを問題視した。

経済関係を中心に中国と親密な関係を築いてきたEUだが、2020年の香港の国家安全維持法制定に伴う民主化の後退などでEU首脳らが中国を批判する場面が目立ってきた。だがそれも「口先」にとどまってきた。今回の30年ぶりの制裁決定は実効性よりも象徴的な意味合いが大きいものの、「蜜月」とも言われた中国とEUの関係の変化を示している。

制裁を可能にした理由には制度面の改善もある。「なぜEUの価値観に関する簡単な声明さえ、出すのが遅れるのか」。フォンデアライエン欧州委員長は20年9月、外交の意思決定が迅速にできないことを嘆いた。EUの外交に関する意思決定は原則として加盟27カ国の全会一致が必要だ。親中の国が1つでも反対すれば行動に踏み出せない。

EU本部は当初、意思決定を全会一致から多数決方式に改めようと動いたものの、意見集約が難しいと判断。20年12月に「グローバル人権制裁制度」を導入した。全会一致を残しながらも、国よりも「人権侵害」という行為に焦点をあてることで、加盟国が合意しやすくした。

22日は中国に加え、この枠組みに基づいて、ロシアや北朝鮮、南スーダン、リビアの当局者への制裁も決めた。ミャンマーの国軍クーデターに関連して国軍関係者11人にも制裁を科した。

EUが対中制裁の背景には、20年末に大筋合意した中国とEUの投資協定への域内外の厳しい視線もありそうだ。

「(ウイグル関連に続いて)香港の民主主義を解体した人々への制裁が実施されねばならない」。20日、有力欧州議員らが入る「対中政策に関する列国議会連盟(IPAC)」がツイッターへの投稿で、早速「次の矢」をEUに促した。ウイグル族への人権侵害に関する制裁だけでは、中国への対応は不十分との考えだ。

EUは欧州議員の要求を簡単に無視できない。欧州議会は20年末に大筋合意したEUと中国の包括投資協定(CAI)の批准に必要な「同意」を出す権限があるからだ。実際、議会は20年12月のウイグル族の強制労働に関する非難決議に続き、21年1月には香港で拘束された民主活動家らの即時釈放を求める決議を採択した。

投資協定の交渉でも、最後まで残ったのが強制労働を禁じる国際労働機関(ILO)の関連条約を中国が批准するかどうかだった。まして人権や民主主義は、EUが最も重視する基本的な価値だ。人権の概念の発祥の地である欧州では、戦後すぐの1950年に欧州人権条約が世界に先駆けて調印され、人権への意識は高い。そのEUが基本的価値を軽視して、経済的利益を優先したとみられれば、批判が一段と高まるのは必至だ。

欧州外ではバイデン米政権の発足が大きい。とりわけ投資協定の大筋合意直前にはバイデン陣営幹部が拙速な妥結に苦言を呈したが、EUは合意に突き進んだ。バイデン政権はすでにウイグル族への弾圧を「ジェノサイド(民族大量虐殺)」と認定したトランプ前政権の判断を追認する意向を示している。

外交や通商、デジタルなどEUはトランプ前政権時に傷ついた米EU関係の改善を急いでおり、具体的な行動をとることで米国と足並みをそろえた。22日からはブリンケン米国務長官がブリュッセルを訪れ、フォンデアライエン氏らと会談し、対中関係も協議するようだ。

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