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英、離脱ルール再交渉を要求 北アイルランド問題紛糾で

EUは拒否の方針

(更新)
英領北アイルランドで英国の統治強化を願う親英派の住民は「アイルランドとの同化が進む」と警戒し、EU離脱に伴う新通商ルールに反対する(7月、英ベルファスト)=ロイター

【ロンドン=中島裕介】英政府は21日、欧州連合(EU)と結んだ離脱協定の一部である英領北アイルランドでの通商ルールについてEUに再交渉を求めると発表した。2021年1月の英国の完全離脱で導入された同ルールにより、北アイルランドで起きている物流などの混乱をおさめる狙いだ。EUは再交渉に応じない方針で、関税ゼロを維持した英EU間の貿易協定に悪影響が出る恐れもある。

EU離脱問題を担当する英国のフロスト内閣府担当相は21日の声明で「新通商ルールが北アイルランドにもたらす困難を無視できない」と訴えた。英EUが永続的に許容できる解決策を見いだすために再交渉が必要だと強調している。

一方、欧州委員会のシェフチョビッチ副委員長は通商ルールについて「EUがジョンソン英首相とフロスト氏と共同で見いだした合意で、英議会も承認した」と英側をけん制した。新ルールの微修正には応じる姿勢を示唆したものの、抜本的な変更につながる「再交渉は同意しない」と断言した。

英EUが合意した新ルールでは北アイルランドとEU加盟国アイルランドの間の国境復活や通関手続きを避けるため、同じ英国内にもかかわらず英本土から北アイルランドに入る物品の通関検査が必要になった。北アイルランドが事実上、EUの単一市場に残ったかたちだ。

北アイルランドでは1960年代後半から98年の和平まで宗教対立や国境を巡る紛争が続いた。英EUは南北アイルランド間に国境を設ければ、紛争の再発や地域の不安定化につながると判断した。

現段階では食品検査の一部を省略したり、禁止になるはずの英本土からの冷蔵肉製品の入荷が継続されるなど激変緩和措置が続く。それでも新たな通関手続きにより物流の遅延などの混乱は絶えない。英小売大手マークス&スペンサーはこのまま激変緩和措置が終われば、北アイルランドでの商品の供給減や価格上昇につながると警告する。

英政府は英本土からアイルランドには向かわずに北アイルランドに残る商品について、全面的に通関検査をなくすことを提案する。そうした商品はEUの衛生基準などを満たさなくても北アイルランドで流通できるようにすることも求める。いずれも英EU間の合意の大きな修正で、EUは受け入れない公算が大きい。

英EU間の合意では「経済的、社会的な困難が生じたとき」に、双方がルールの破棄など一方的な対応を取れると定めている。英政府はこの条項について「使う状況は起きている」(フロスト氏)と主張し、EUの対応次第では一方的なルールの凍結の可能性もにじませる。

北アイルランドでは英国の統治強化を求めるプロテスタント系の住民が「南のアイルランドとの同化が進む恐れがある」として新ルールに強く反発する。親英派住民による暴動も起きており、ジョンソン政権も強気に出ざるを得ない。

EUはすでにこの問題で3月に、英側からの新ルールの一部の一方的な変更を受けて法的手続きを講じている。加盟国の視線を考えれば、英国に対して簡単には妥協できない。英国がルールの凍結などに踏み切ればEUが制裁関税などの手段に出る可能性もある。曲折を経て20年末に合意した通商協定で何とか維持している関税ゼロの貿易が壊れるリスクがある。

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