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ECBが11年ぶり利上げ、幅0.5% マイナス金利解除

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【フランクフルト=南毅郎】欧州中央銀行(ECB)は21日の理事会で、政策金利を0.5%引き上げると決めた。利上げは11年ぶりで、上げ幅は2000年以来22年ぶりの大きさ。ロシア産天然ガスの供給不安で景気悪化懸念が急速に高まるものの、インフレ阻止を優先した。景気後退とインフレが同時に進む「スタグフレーション」のリスクもあり、政策運営の難易度は増している。

ECBのラガルド総裁は21日の記者会見で「大きな第一歩を踏み出すことが適切であると判断した」と述べた。主要政策金利をゼロ%からプラス0.5%、銀行が中央銀行に預ける際の金利(中銀預金金利)をマイナス0.5%からゼロ%に引き上げる。新たな金利は27日から適用する。14年に導入したマイナス金利政策が終了する。

これで米欧の主要中銀が利上げで足並みをそろえたことになる。米連邦準備理事会(FRB)は27日の会合で2カ月連続となる0.75%以上の大幅利上げを決める見込み。英イングランド銀行も8月に0.5%の利上げに踏み込む可能性がある。インフレ抑制へ通常(0.25%)の2倍以上の規模で利上げを進める動きが広がってきた。

ECBが0.5%の利上げに踏み切るのは、インフレが深刻なためだ。ラガルド総裁は会見で、インフレ見通しについて「引き続き上振れリスクがある」と述べた。ユーロ圏の消費者物価の伸び率は8%超と過去最高を更新し続けている。米ゴールドマン・サックスは今秋に10%程度まで上昇すると試算する。

欧州経済の先行きは不透明だ。ロシアに依存する天然ガスの供給が細り、ドイツでは23年2月前後にもガス貯蔵が枯渇するリスクが浮上する。ドイツ銀行のチーフ欧州エコノミスト、マーク・ウォール氏は「緩やかな景気後退に陥り、利上げが一時中断される可能性がある」と指摘する。

エネルギー価格の上昇は、日本と同様に天然資源を輸入に頼る欧州経済にとって逆風になる。家計や企業の収支を悪化させ、個人消費や設備投資の減少にもつながる。

ドイツでは5月の貿易収支が統計で遡れる08年以降で初めて赤字に転落した。外国為替市場で実需のユーロ売りが膨らみ、13日には1ユーロの価値が1ドルとなる「パリティ(等価)」を約20年ぶりに割り込んだ。今回利上げに踏み切らなければ、米欧金利差の拡大でユーロ安が一段と加速し、インフレに拍車をかけるジレンマもあった。

今後は公的債務が膨らむ南欧諸国への対応が焦点になる。急な利上げは金利上昇を通じて債務負担を高める。前回11年の利上げ局面では、欧州債務危機が深刻になり年末にかけて一転して利下げを迫られた。6月に利上げ方針を示して以降、イタリアやスペインなどの国債利回りは急上昇(価格が急落)していた。

ECBは市場の動揺を抑えるための新たな措置「トランスミッション・プロテクション・インスツルメント(TPI)」の導入を決めた。南欧諸国を念頭に国債価格が急落する事態に備え、必要に応じて国債などを買い支える構えだ。財政規律の改善などを条件とし、実際の購入規模は「リスク次第で事前の制約はない」。市場を安定させ、円滑に利上げを進める狙いがある。

※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

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