イスラエル極右閣僚が暴言「パレスチナ人存在せず」

【カイロ=久門武史】イスラエルの極右政党党首のスモトリッチ財務相が「パレスチナ人など存在しない」といった暴言を連発し、パレスチナやアラブ諸国が猛反発している。イスラエルとパレスチナの間では暴力の連鎖で死傷者が膨らんでおり、緊張が悪化する恐れがある。
同氏は19日にパリで開かれたユダヤ系フランス人らの会合で「パレスチナ人はこの100年未満でつくられた」「歴史も文化もない」などと述べた。演壇で示された「大イスラエル」とする地図には隣国ヨルダンも含まれていた。イスラエルメディアが伝えた。
パレスチナ自治政府のシュタイエ首相は20日「イスラエル政府内の過激主義、人種差別的なイデオロギーの証拠だ」と非難した。ヨルダン外務省は同日、イスラエル大使を呼び出して抗議し「怒りをかき立てる行為であり、国際規範や平和条約に違反する」と強調した。
イスラエルとパレスチナの当局者は19日にエジプトで協議し、情勢を悪化させる言動を自制すると確認したばかりだった。昨年末に発足したイスラエルのネタニヤフ政権は同国史上最も右寄りの政権とされ、連立を組む極右政党の閣僚の言動に懸念が強まっている。
アラブ諸国も相次いで非難声明を出した。サウジアラビア外務省は「攻撃的で人種差別的な発言」だと批判した。アラブ首長国連邦(UAE)は「ヘイトスピーチや暴力に立ち向かう必要性を強調する」とした。同国は2020年にイスラエルと国交を正常化した。19日の協議を仲介したエジプト外務省は「平穏を達成する努力を損なう」とした。
欧州連合(EU)のボレル外交安全保障上級代表は20日「誤りであり、危険だ」として発言の否定をイスラエル政府に求めた。「パレスチナの指導者がイスラエルは存在しないと発言したら? 反応はどうだろうか」と訴えた。