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火種残すガザ停戦、揺らぐ米の影響力 中東政策に不信感

(更新)
停戦を喜ぶパレスチナ人(21日、パレスチナ自治区ガザ)=ロイター

【カイロ=久門武史、ワシントン=中村亮】イスラエルとパレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム原理主義組織ハマスの停戦が21日、発効した。聖地エルサレムをめぐる対立などが未解決なうえ、バイデン米政権の中東政策に対する双方の不信感もあり、停戦合意の実効性には不安が残る。イラン核合意をめぐる交渉や中東情勢全体への影響も懸念される。

交戦がやんだガザでは21日、パレスチナの旗を手に停戦を祝う人々が続々と路上に繰り出した。10日からハマスがイスラエルにロケット弾を発射し、イスラエル軍がガザを空爆する応酬が続いていた。ガザでの死者は子供65人を含む232人でイスラエル側でも12人が犠牲になった。

停戦条件は公表されていないが、米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は19日、イスラエルがハマスが攻撃に使う地下トンネルの掘削中止などを求めていると伝えた。中東メディアによるとハマス幹部はエルサレムのイスラム教礼拝所「アルアクサ・モスク」からのイスラエル当局の撤退などを求めていた。

調停役をつとめたエジプトが代表団を双方に送るが、停戦が続くかどうかは見通せない。ガザでは2008年や14年にも大規模衝突があり、停戦合意と破棄が繰り返された。イスラエルのネタニヤフ首相は21日、「ロケット弾攻撃を黙って許すとハマスが思うなら、間違いだ」と停戦順守を迫った。ハマス幹部も「我が手は引き金にかかっている」と威嚇した。

停戦合意に不安が残るのは、交戦の発端となったエルサレムの問題やユダヤ人入植活動でパレスチナ人に広がる不満が放置されているためだ。中東に詳しいHSWジャパンのクリスピン・ホーズ氏は「双方とも問題の真の解決ではなく、それぞれ内向きの目的を追求した」にすぎないとみる。

イスラエル軍は今回の作戦で、ハマスの地下トンネル網「メトロ」を約15キロメートルにわたり破壊し、戦闘員を多数殺害したと説明した。ネタニヤフ氏は「ハマス(の戦闘能力)を数年分後退させた」と誇った。ハマスも4千発以上のロケット弾を発射し、パレスチナでの存在感を高めた。

しかし、今回の交戦の背景には4月中旬からエルサレムで相次いだパレスチナ人とイスラエル警察の衝突が今月7日に激化したことがある。イスラエル当局が東エルサレムのシェイク・ジャラ地区に住むパレスチナ人家族に立ち退きを迫り、パレスチナ人の怒りに火をつけた。

ユダヤ人がパレスチナ人を追い出す象徴とみなされ、イスラエル当局のこれまでの対応にも反感が高まった。ガザ空爆後はヨルダン川西岸各地でパレスチナ人の抗議行動が相次いだ。イスラエル国内でもパレスチナに連帯意識を抱くアラブ系市民がユダヤ人と衝突を重ねた。全土に広がった抵抗の火種はくすぶり続ける。21日の停戦発効後、アルアクサ・モスク付近でパレスチナ人とイスラエル警察の衝突が起きた。

バイデン政権の中東政策も停戦継続に影を落とす。元国務省高官は「ネタニヤフ氏の対米不信は極めて根深い」との見方を示し、米国の影響力が低下していた可能性を指摘する。バイデン政権はイスラエルが反対するイラン核合意への復帰を目指し、パレスチナ向けの資金支援を再開する方針も示していた。

パレスチナ側でも不信感が募る。バイデン政権はトランプ前政権の過度にイスラエル寄りの政策を修正する姿勢を示していたが、今回は結局イスラエルの肩を持ったからだ。米国とイスラエルの蜜月関係が崩れ、パレスチナ側と米国の関係も盤石でない。今後も米国に仲裁役を期待するのは難しい。

米国が復帰を目指すイラン核合意の交渉もさらに見通せなくなった。核合意には反対の立場であるイスラエルへの配慮を続けざるを得なくなっている。イスラエル配慮を続ければ、対立関係にあるイラン国内では米国を敵視する強硬派の勢力が強まる恐れがある。

交戦中、アラブ諸国はイスラエルの強硬姿勢を一斉に批判した。イスラエルと国交を樹立したアラブ首長国連邦(UAE)なども国内の反イスラエル感情の高まりを警戒せざるを得ない。前米政権下で進んだ中東地域の融和ムードに冷水を浴びせかねない。中東情勢は今後、一段と混沌とする懸念がある。

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