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リビア復興、商機狙う欧州中東企業 カダフィ政権崩壊10年

北アフリカの産油国リビアでカダフィ独裁政権が崩壊して23日で10年になった。武装勢力間の紛争も2020年にようやく停戦合意が成立し、復興需要を狙う欧州や中東の企業の動きが相次いでいる。暫定政府は今年12月の総選挙と大統領選を目指すが、本格的な政権への移行は見通せない。

「イタリアはあなたたちの味方だ。支援し続ける」。イタリアのディマイオ外相は8月上旬、リビア高官と相次いで会談し、協力を約束した。ディマイオ氏は21年に入って重ねてリビアを訪れている。5月には、国際空港や高速道路の建設をイタリア企業が手掛けるとも述べた。

内戦で荒れたリビアの復興需要は大きい。グワイル経済担当国務相は5月「復興のため今後10年で6千億ディナール(約14.6兆円)を投じる必要がある」と述べた。各種インフラ整備などでビジネスチャンスは大きい。

旧宗主国イタリアに加え、地中海沿岸で地の利があるフランスやスペインの企業も関心を示す。中東周辺国もリビアへの進出意欲を隠さない。トルコの複合企業アルバイラクは7月、リビア西部のミスラタに訪問団を送り、物流拠点や倉庫の建設投資について情報収集した。

リビアと国境を接するエジプトは今月15日に経済団体が復興需要の調査のためリビアを訪問した。両国は航空便の再開や通信、投資などの協力で合意している。中国の動きも素早い。4月、官民の訪問団がリビア高官と投資やインフラ整備などを巡り話し合った。

アフリカ最大の原油埋蔵量を誇るリビアは、11年に中東の民主化運動「アラブの春」で約42年続いたカダフィ独裁政権が崩壊した。民主化プロセスで混迷し内戦に陥った。東西の2つの勢力に分裂して戦闘を重ねたが、20年10月に停戦合意し、21年3月には国連主導の和平協議の結果、ドベイバ暫定政権が発足した。今後の政情安定で経済が正常化するとの期待が関係国の投資意欲をかき立てている。

ただ本格政権への移行は道半ばだ。停戦は守られているが、10年に及ぶ混乱で対立を深めた勢力同士の和解は簡単ではない。重要なステップとなる総選挙と大統領選を12月に予定しているが、選挙を実施するための法的枠組みの整備は足踏みしている。リビアの対立する各勢力が7月に開いた会議は紛糾し、合意できなかった。

「(選挙の)延期は危険なシナリオへの扉を開く」。ドイツ外務省の中東・北アフリカ局長はこうツイッターで懸念を示した。リビア政治に詳しいアブデルバセト・ビンハメル氏は「停戦で死者は減ったが治安や経済水準は改善せず、市民はインフレに苦しんでいる」と話す。

国際通貨基金(IMF)によると20年のインフレ率は22%だった。疲弊した市民の間では強い指導者と安定を望む声があり、カダフィ家の復活論まで取り沙汰される。カダフィ大佐の次男で後継者候補だったセイフイスラム氏は7月、米紙ニューヨーク・タイムズの取材に「ゆっくりと戻る必要がある」と述べ、政界復帰をほのめかした。カダフィ政権崩壊後の11年に拘束され、17年に恩赦で釈放されていた。

内戦に介入するロシアとトルコが派遣したとされる雇い兵らが多数リビアに残っている問題もある。国づくりの停滞が長引けば、再び情勢が流動化する。復興予算の確保も含めて企業進出の条件も整わず、再び政情などが混乱する恐れもある。(久門武史)

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