英市場、首相辞任でトリプル高 欧州首脳は政治安定期待

【ロンドン=大西康平】英国のトラス首相が辞任を表明した20日のロンドン金融市場では一時、国債・通貨・株式の3資産がいずれも上昇するトリプル高となった。市場の混乱を招いた財政拡大策からの転換が進むと期待された。就任から1カ月半での辞任表明という短命政権となり、欧州の首脳からは政治の安定を求める声が相次いだ。
20日は英30年物国債の利回りが一時、前日比約0.2%下落(価格は上昇)の約3.8%と、約2週間ぶりの低水準となった。外国為替市場では一時1ポンド=約1.13ドルと、前日末の1ポンド=1.12ドル付近から上昇した。代表的な株価指数の英FTSE100も前日比で2日ぶりに上昇した。
「英国はリーダー不在となったが、市場は安堵しているようだ」と英キャピタル・エコノミクスのポール・デールズ・チーフ英国エコノミストは指摘する。ただ夕方には国債と通貨が売り戻される動きも出た。28日までに新首相となる保守党の党首選出、31日に中期財政計画が発表予定と当面の政治的な不透明さが拭えないためだ。
フランスのマクロン大統領は20日、欧州連合(EU)首脳会議のため訪れていたブリュッセルで「英国が一刻も早く安定して前に進むことを期待している。それが我々や欧州にとって良いことだ」と述べた。
英メディアによると、アイルランドのマーティン首相は「個人的にはトラス首相に同情する。英首相にとって困難な時期だった」と話した。ロシアによるウクライナ侵攻を念頭に「欧州が直面する地政学的な状況からも、安定性がとても重要だ」と指摘し、早期に次期首相が選出されることを求めた。