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EUが「ワクチンパスポート」構想 接種者に移動の自由

【ブリュッセル=竹内康雄】欧州連合(EU)が新型コロナウイルスのワクチン接種者に域内を自由に移動できる公的な証明書を発行する検討を始めた。観光業に依存するギリシャなど南欧諸国が実現を求めているためだ。人の移動を認め、経済を活性化させる狙いだ。21日にオンラインで開く首脳会議で議論するが、慎重論は根強い。

この構想は「ワクチンパスポート」とも呼ばれる。具体的な内容は詰まっていないが、証明書を持つワクチン接種者は自主隔離やPCR検査を免除されることなどが想定される。経済を観光に依存するギリシャなどが実現を求めており、ミツォタキス首相は1月半ばに、EUの執行機関である欧州委員会に宛てた書簡で「ワクチン接種は旅行に必須とはならないが、接種者は自由に移動できるようになるべきだ」と訴えた。

欧州では新型コロナのワクチン接種が始まった(18日、ベルギー)=ロイター

背景には人の移動を認めることで観光産業を活性化し、景気を浮揚させたいとの思惑がある。新型コロナで2020年の欧州経済は大幅なマイナス成長になったようだ。景気回復が遅れれば、企業の破綻や失業が増え、社会不安につながりかねない。ポルトガルのコスタ首相は15日、「観光は我々の経済に非常に重要だ」と主張。国際航空運送協会(IATA)は19日、早期実現を求める声明を出した。

EUの執行機関である欧州委は19日公表した文書で、加盟国に成人の少なくとも70%のワクチン接種を夏までに終えるよう勧告した。観光シーズンの夏までに証明書を実現したいとの狙いがにじむ。欧州委は首脳会議で合意することを期待するが、実現には曲折も予想される。

EUでは2種類のワクチンが承認されて接種が始まっているが、加盟国からはワクチンの供給の遅れなどに批判が出ている。国民に行き渡るワクチンが確保できるか不透明ななか、フランスなどはこの構想に慎重だ。ワクチンは自発的な接種が原則で、証明書が移動の自由を認めることになれば、事実上の強制になりかねない。

EUのミシェル大統領は17日のオランダのテレビ番組で、証明書構想に一定の理解を示しながらも「ワクチンを受けられない人の不満を引き起こしかねない」と述べ、実施する時期などについて慎重な議論が必要との考えを示した。接種者と接種していない人との差別の助長につながると懸念する声もある。

EUの専門機関、欧州疾病予防管理センター(ECDC)によると、欧州では20年秋ごろから高水準の感染状況が続き、足元でEU各国は営業規制や移動制限を強める方向で動いている。規制や制限の緩和を議論するのは時期尚早との見方もあり、結論を得るまでに時間がかかる可能性がある。

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