マクロン大統領、イランを暗に非難 「イラクに影響力」 - 日本経済新聞
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マクロン大統領、イランを暗に非難 「イラクに影響力」

【イスタンブール=木寺もも子、パリ=北松円香】ヨルダンで20日、中東主要国の首脳らが集まり、地域情勢を協議した。イラク安定が主要なテーマで、参加したフランスのマクロン大統領は「イラクは様々な影響力の行使や侵略行為、不安定化の現場だ」と指摘。イラクに干渉する隣国のイラン、トルコを暗に非難した。

イラクでは多数派のイスラム教シーア派にイランが食い込み、同国に近いスダニ氏が首相に就任した。イランはシーア派の法学者が政権を握る。トルコはイラク北部のクルド人自治区の「テロリスト」を標的に攻撃を繰り返している。

出席したイランのアブドラヒアン外相はイラクを「兄弟国」と明言。アブドラヒアン氏はツイッターを通じ、イランと対立するサウジアラビアのファイサル外相とも意見を交換したと明らかにした。そのうえで国交正常化を視野に対話を続ける構えを示した。サウジは2016年、イランとの断交を表明した。

今回の会議は「バグダッド2」と呼ばれ、21年8月にバグダッドでフランスとイラクが主催した会議のフォローアップとして開かれた。イラクでは21年10月の総選挙を受け、22年10月にスダニ政権が成立し、開催の環境がようやく整った。次回は23年にエジプトで開かれる見通しだ。

イラクにはイラン最高指導者に直属する軍事機関、イラン革命防衛隊の部隊が駐留してきた。20年にはバグダッドに米軍の空爆があり、革命防衛隊幹部のソレイマニ司令官が死亡した。アブドラヒアン氏はソレイマニ氏をたたえたうえ、ヨルダンのアブドラ国王らにあいさつした。だが、フランスには言及しなかった。

スダニ氏はイラン寄りとされるが「イラクは内政への干渉や主権の侵害、領土への攻撃を拒否する」などと主張した。

マクロン氏が指摘したように、イラクの人口構成はイスラム教シーア派、スンニ派といった宗派で大きく分かれる。民族の観点では多数派のアラブ人が少数派のクルド人に対して優位に立つ。宗派、民族で分かれるグループがそれぞれ対立し、一部は外国勢力と結びつく。同じグループの中でも分裂するケースがある。

イラン、トルコはそれぞれが敵視する別のクルド系勢力をターゲットにイラク北部への空爆や砲撃を繰り返している。

過激派組織「イスラム国」(IS)の「残党」も活動する。18日にイラク北部で起こった爆発で少なくとも警察官8人が死亡した。ISが関与したとみられている。

今回の会議の狙いは主に、イラクを巡る緊張の緩和と、03年に始まったイラク戦争やIS台頭からのイラクの復興支援だ。エジプトのシシ大統領も参加した。イランはライシ大統領の派遣を見送り、トルコ代表は駐ヨルダン大使だった。

フランスはかつて支配したシリア、レバノンを軸に、中東とは深く関与してきた。マクロン氏は米国の存在感が低下する中東で発言力の向上を目指す。

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