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イラクがIMFに緊急支援要請 経済危機、総選挙も延期

(更新)
イラク軍創立100年の式典に出席するカディミ首相(6日、イラク首相府提供)=ロイター

【カイロ=久門武史】イラクが国際通貨基金(IMF)に緊急支援を要請した。計60億ドル(約6200億円)の融資で、原油安と新型コロナウイルスの感染拡大で逼迫する財政の立て直しを目指す。経済の苦境が深まる中、政府は6月に予定していた総選挙を10月10日に延期すると表明した。

アラウィ財務相が60億ドルの融資をIMFに求めていると米ブルームバーグ通信に述べた。このうち20億ドルは新型コロナ対策の緊急融資を申請し、残り40億ドルは他の制度で低利融資を求めるという。

イラクは石油輸出国機構(OPEC)第2の産油国だ。新型コロナの感染拡大による原油安は、歳入の9割を原油輸出に頼っていたイラクの財政を直撃した。2021年予算案は、ブルームバーグによると490億ドルの赤字を見込んでいる。

外貨準備の目減りを抑えるため、政府は昨年末に通貨ディナールの公定レートを対ドルで2割強、切り下げた。輸入品の値上がりに直結し、物価の上昇を招いている。ただでさえ新型コロナで冷え込む経済活動に二重の打撃となる。

国民の不満が募るなか、政府は19日、総選挙の延期を表明した。カディミ首相は「公正で透明な選挙のためだ」とし「技術的な理由」を挙げた。技術的な問題の詳細は明らかにしていない。

早期の選挙は、19年10月に始まった大規模な反政府デモの参加者が要求していた。当時のアブドルマハディ首相が辞任に追い込まれ、後任のカディミ氏は昨夏、総選挙を21年6月に約1年前倒しすると表明していた。

次期総選挙は、19年の大規模デモ後で民意を測る最初の機会になる。カディミ首相は就任からまもなく9カ月になるが、新型コロナも重荷となり経済問題で打開策を描けていない。政権批判があらわになるのを避けたい思惑があるとみられるが、総選挙の先送りは民意の軽視だとの批判を招きかねない。

新型コロナで収支が悪化する前から、イラク財政は構造的な問題を抱えていた。雇用の受け皿として公共部門が肥大化し、政府支出の4割以上を公務員の給与と年金の支払いが占めるとの推計がある。昨年後半に公務員への賃金支払いの停滞が目立つようになり、個人消費に影を落としている。

IMFはイラクの20年の実質ベースの経済成長率を前年比マイナス12%とみている。しわ寄せは国民生活に及ぶ。昨年末、隣国イランからのガスの供給が、輸入代金の不払いで一時止まったと伝えられた。

頼みの原油価格はワクチンへの期待などから持ち直してきたが、国際指標の北海ブレント原油先物は1バレル55ドル前後にとどまる。イラクのアブドルジャバル石油相は15日、今年第2四半期に60ドル前後への上昇を見込むと述べた。それでもIMFが21年のイラクの財政収支均衡に必要とみる64ドルには及ばず、財政好転のめどは立たない。

首都バグダッド中心部では21日、2件の自爆テロがあり少なくとも32人が死亡した。過激派組織「イスラム国」(IS)が犯行を主張する声明を出した。イラク政府が17年12月にISに勝利宣言し、改善傾向にあった治安にも懸念が出ている。

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