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仏マクロン政権、2期目の試練 反年金改革デモに112万人

【ロンドン=佐竹実】2期目に入ったフランスのマクロン政権が試練に直面している。年金制度の改革案に労組が一斉に反発し、全土で大規模なデモが発生した。政権は財政安定化のために改革が必要だと訴えるが、有権者の反対を押し切れば支持率低下は避けられない。高インフレで国民の不満は高まっており、反対運動は長期化する可能性もある。

フランスにとって社会保障制度を持続可能なものとするための改革は長年の課題だ。マクロン政権が10日に発表した年金改革案は、現在62歳の受給開始年齢を23年9月から段階的に遅らせ、30年に64歳とすることが柱。当初は65歳を想定していたが、組合などの反発に配慮し1年早めた。受給額が少ない年金生活者への配慮として、年金の最低支給額を23年から月額1200ユーロ(約17万円)程度と、現状より100ユーロ程度引き上げることも提案した。

それでも大きな反発を招いた。19日に行われたデモは首都パリをはじめ全土に及び、参加者は112万人にのぼった。地下鉄や鉄道など公共交通機関が止まったほか、学校も一部で休校になるなどして市民生活に影響が出た。外務省による定例会見もキャンセルされた。デモは一部暴徒化し、治安部隊が出動する場面もあった。

「敬意と対話の精神、決意を持って遂行する」。マクロン大統領は19日、訪問先のスペイン・バルセロナでこう述べ、年金改革が公正だとの認識を改めて示した。マクロン政権は1期目だった2019年にも年金改革を主張したが、デモを受けて断念している。当時のデモ参加者の規模は80万人で、今回はそれを上回る。

フランスの年金制度は他国よりも受給開始年齢が早く、財政への負担が大きい。経済協力開発機構(OECD)によると、17年時点のフランスの年金向け公的支出は国内総生産(GDP)比で13.6%。OECD加盟国平均(7.7%)を大きく上回る。

改革案は閣議説明を経て国民議会(下院)で審議される見通しだ。与党は下院で過半数を下回っており、中道右派の共和党の協力を得るなどして実現を目指す。仏メディアによると、強行採決のシナリオも残っている。

次の大規模デモは30日に予定されている。ルメール仏経済・財務相は20日、「ストは基本的な権利だが、働きたい人の権利も尊重されるべきだ」と述べた。

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