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米軍なぜ派遣できない? ウクライナ情勢緊迫

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ウクライナ情勢が一段と緊迫している。タス通信などによると、ロシアのペスコフ大統領報道官は23日、ウクライナ東部の親ロシア派武装勢力が「ウクライナ軍の攻撃を撃退するため」の支援をプーチン大統領に要請したと明らかにした。バイデン米政権は、ウクライナ国境周辺に配置したロシア軍の8割が攻撃開始に向けた位置に移動済みで「最大限の臨戦態勢に入っている」と分析する。なぜロシアは強硬姿勢でウクライナにこだわるのか。4つのポイントをまとめた。

・バイデン政権は米軍をウクライナに派遣しないのか
・ロシアとウクライナの歴史的な経緯とは
・「大国復活」を目指すプーチン氏の野望とは
・なぜNATOの東方拡大をここまで警戒するのか

(1)バイデン政権は米軍をウクライナに派遣しないのか

バイデン米大統領はロシアがウクライナに侵攻した場合でも同国に派兵しないと繰り返してきた。その理由について、ウクライナは米欧の30カ国でつくる軍事同盟「北大西洋条約機構(NATO)」に加盟しておらず「(条約に基づく防衛)義務がおよばない」と説明する。

NATOの根幹は加盟国が攻撃を受ければ他の加盟国が自国への攻撃とみなして反撃する集団的自衛権の行使を定めた北大西洋条約第5条にある。バイデン氏は米軍の派遣について「米国とロシアが互いに攻撃を始めれば世界大戦になる」とも話す。アフガニスタンでの撤退に失敗したこともあり、米国内ではウクライナへの米軍派遣については慎重な見方が多い。

(2)ロシアとウクライナの歴史的な経緯とは

「ロシア人とウクライナ人の歴史的な同一性について」。プーチン大統領は2021年7月にこう題した論文を発表し、「1つの民族」だと主張した。ウクライナをロシアの勢力圏に取り戻すことが自らの使命だと考えているようだ。

ロシアとウクライナ、ベラルーシは同じ東スラブ民族で、統一国家の始まりは9世紀から12世紀ごろまで栄えたキエフ・ルーシにある。中心地は現在のウクライナの首都キエフだった。その後も現ウクライナ領には独自の国が長く形成されず、ロシア帝国やポーランドなどの支配下に置かれた。

ウクライナはほぼ20世紀を通して旧ソ連の一部であり、本格的な国家として歩み始めたのは1991年のソ連崩壊後だ。欧州連合(EU)とロシアに挟まれた影響力争いの舞台となり、政権も親欧米と親ロシアとが交互に発足した。2014年に民主化を求める親欧米派による政変で親ロ派政権が倒れると、ロシアはクリミア半島を一方的に併合し、ロシア系住民の多い東部にも侵攻した。

(3)「大国復活」を目指すプーチン氏の野望とは

ウクライナは4000万を超す人口と広大な国土を持つ旧ソ連第2の大国だ。ウクライナなしでロシアは帝国にはなれない――。ブレジンスキー元米大統領補佐官はこう述べたことがある。「大国の復活」の野望を抱くプーチン氏にとって、ウクライナを自らの勢力圏にとどめることは絶対条件だ。

ロシアは13世紀から15世紀にモンゴルに支配され、19世紀初めにナポレオン率いるフランスにモスクワを占領された。第2次世界大戦でもナチスドイツに国土深く攻め込まれた。こうした経緯もありロシアは伝統的に安保意識が強いとされ、プーチン政権は安保を重視する治安機関や軍関係者ら保守強硬派の影響力が強い。ロシアと欧州の真ん中に位置するウクライナが欧米陣営に加わるのを容認することは国民感情の面からも極めて難しい。

(4)なぜNATOの東方拡大をここまで警戒するのか

ウクライナを巡る米欧とロシアの対立は、ソ連崩壊後、新たな欧州安保体制構築の試みが挫折したことも意味する。プーチン氏は昨年12月、東欧諸国を加盟させないというNATOの約束が過去に破られてきたとして「ひどくだまされた」と恨みを口にした。2000年代初めまでは米ロは融和に向かうかに見えたが、プーチン政権は米欧への反発を強めていった。

一方、ウクライナはNATO加盟を国家目標に掲げ、ロシアとの対立を深めた。ロシアは米欧の部隊や攻撃兵器がロシアの西部国境近くに展開され、自国の安全保障が決定的に損なわれると懸念する。東部紛争を巡って軍事圧力を強めてウクライナの後ろ盾である米国を交渉に引き出し、ウクライナのNATO非加盟を確約させようとした。

(モスクワ=石川陽平、ワシントン=坂口幸裕)

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