/

輸出頼みの景気浮揚 トルコ、8カ月ぶり利下げ

【イスタンブール=木寺もも子】トルコ中央銀行が再び、緩和策を打ち出した。政策金利を8カ月ぶりに引き下げると決め、18日に発表した。通貨リラの対ドル相場下落を誘導し、輸出産業を支援する。主要国や新興国が相次ぎ利上げに踏み切るなか、異例の「逆張り」だといえる。再選を目指すエルドアン大統領の意向を強く映すが、インフレの加速は確実で、有権者の不満は高まりかねない。

金融政策決定会合で主要政策金利の1週間物レポ金利を年率14%から同13%に改めると決めた。中銀は18日の声明で「各種指標が7~9月期の経済活動の鈍化を示している」と指摘。「工業生産の成長や良好な雇用トレンドの維持を支えるための金融環境が重要だ」と主張した。利下げの狙いが、トルコ経済の柱の一つである自動車、家電など製造業の輸出支援なのは間違いない。

ロシアのウクライナ侵攻による主要輸出先の欧州の景況感悪化や国内の物価高騰で好調だったトルコ経済も変調の兆しがあった。製造業購買担当者景気指数(PMI)は7月まで5カ月連続で基準の50を下回り、悪化した。

スペイン大手銀BBVAは最近のリポートで2022年のトルコの実質成長率を5%前後と予想した。「経済活動は7~9月期、急激に減速」とも付け加えた。トルコ統計局によると、同国の実質成長率は21年、11%に達した。リラ安を背景にした好調な輸出と、新型コロナウイルスの影響が一段落した個人消費がけん引した。それに比べれば、足元の景気は思わしくない。

低金利の副作用としてインフレが加速し、最近の個人消費は陰る。消費者物価指数(CPI)の上昇率は前年比で80%近くに達した。景気を押し上げるには輸出をテコ入れするのが早道だと中銀とエルドアン政権は考えた。

通貨リラの対ドル相場は利下げ決定の発表直後、1ドル=18リラ台に乗り、年初来の安値を更新した。リラはその前から売られ、年初からの下落率は3割に近い。トルコ商務省などによると、同国の輸出額は1~7月が前年同期比19%増の1444億ドル(約20兆円)に達した。この期間での過去最高を更新した。

米欧が制裁を発動したロシア市場の開拓にも積極的で、5~7月の対ロシア輸出額は前年同期より4割以上増えた。トルコは対ロシア制裁に加わっていない。

まるでインフレ加速を「容認」しているようにみえる利下げについて、英ブルーベイ・アセット・マネジメントの専門家は顧客向けのメールで「正気の沙汰ではない」と表現した。

インフレ率を考慮すれば実質金利が足元でマイナス60%台に沈み、利下げする環境にないというのが市場関係者の常識だ。ところが、エルドアン氏の持論は「金利が低下すれば物価も下がる」。経済学の定石とは正反対の考え方だ。

トルコ国民の大半はイスラム教徒で、イスラム法は金利を「不労所得を生む」との理由で否定する。保守的なイスラム教徒を支持基盤の一つとするエルドアン氏は公の場でも「金利は悪」と繰り返している。

エルドアン氏がにらむのは23年半ばまでに実施される大統領・議会の同日選での勝利だ。金融緩和で経済を好転させ、再選を実現する戦略を描いているようだ。だが、元中銀総裁のエコノミスト、ドゥルムシュ・ユルマズ氏は「政権は貸し出しの拡大で国民が満足すると考えているが、思い込みだ」と言い切る。

常識外れの低金利でリラの信用が失墜すれば貸出金利はかえって上昇する可能性がある。原油や天然ガスは輸入頼みで、通貨下落は物価高に直結する。イスタンブール経済研究所の8月の世論調査でエルドアン氏の与党連合の支持率は38%だったが、野党連合は42%で上回った。年初のあたりから野党が与党を支持率で上回る状況が続く。

元中銀総裁のビュレント・ギュルテキン氏は利下げについて「政治的には一時の支持拡大につながるかもしれないが、どれほど続くのか」と困惑する。

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

セレクション

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン