英のEU離脱担当相が辞任 増税・コロナ対策に不満か

【ロンドン=中島裕介】英国の欧州連合(EU)離脱後の懸案について、EUとの協議を担当していたフロスト英内閣府担当相が18日、辞任を表明した。理由は明示していないが、ジョンソン政権の増税方針や新型コロナウイルス対策の強化への不満が一因だったとみられる。不祥事や議会下院の補欠選挙の敗北など逆風が続くなか、首相を支える対EU強硬派の辞任は政権運営の打撃になりそうだ。
フロスト氏は英政府の元外交官で、2020年末にEUと合意した新たな貿易協定の首席交渉官を務めた。21年3月に下院議員以外から異例の入閣を果たした。直近では英領北アイルランドの国境問題など、英・EUの貿易協定発効後も残っている懸案についてEUと協議していた。
フロスト氏はジョンソン首相への辞任の書簡でEU離脱後の政権の政策について、規制緩和や低税率政策などの経済活性化を目指す動きが鈍いことに懸念を示した。ジョンソン政権は新型コロナの大規模な財政支出を賄うために、法人税率の引き上げなどを決めている。
新型コロナ対策についても、「コロナと一緒に暮らすことを学ぶ必要がある」と不満を表明した。英政府は変異型「オミクロン型」の感染拡大を受けて、新たに大型イベントなどでのワクチン証明書の提示を義務づけ、屋内でのマスク着用も復活させた。フロスト氏は政府が7月にコロナ規制をほぼ撤廃した状態が「不可逆的であると証明されなかった」と批判し、さらなる規制強化をしないようクギを刺した。
ジョンソン氏率いる与党・保守党の支持率は12月に入って急激に低下し、最大野党・労働党に追い抜かれた。特に国民に厳しい行動規制を課していた昨年の冬に、英首相官邸が数十人規模のクリスマスパーティーを開いていた疑惑が政権の信頼を失墜させている。
16日には与党が実質的に200年近く議席を守ってきた英中部の選挙区での下院補選で、野党に議席を奪われたばかり。保守党内の一部でジョンソン党首の不信任投票を模索する動きもあるなかで、今回の辞任はジョンソン氏の政権運営の苦境に拍車をかける。
一方でEUとの懸案の解決には追い風になるとの見方もある。フロスト氏はEUとの協議で強硬姿勢を貫き、EU幹部とのあつれきも生んできた。足元では北アイルランドの国境問題に関する通商ルールを巡って、EUとの離脱協定の一部を止める可能性にも言及していた。